研究課題/領域番号 |
22K13266
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
窪田 暁 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (40643119)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 近代スポーツ / ドミニカ共和国 / 野球移民 / 贈与経済 / グローバル化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドミニカ共和国(以下、ドミニカ)からアメリカアメリカに渡るプロ野球選手を「野球移民」を対象に、彼らが出身社会に富を分配する際に抱える経済倫理をめぐる葛藤とそこから生みだされる新たなスポーツ実践の実態を明らかにするものである。初年度である2022年度は、まず「野球移民」による分配行動について考察した論稿を発表するとともに、8月~9月にドミニカでのフィールドワークをおこなった。 ドミニカでの調査では、新たなスポーツ実践であるバスケットボールがどのように運営されているのかを把握するために、地方都市(バニ市)で組織されるバリオ(町、村)対抗リーグ戦の主催者とリーグ創設に中心的な役割を果たした元プロバスケットボール選手へのインタビューを実施した。そこからは、かつての「野球移民」による富の分配が、出身地における野球環境を整備することを目的にしていたのに対し、近年になり野球以外のスポーツにその対象を拡大している実態が明らかになった。その背景には、新自由主義の浸透が経済状況の悪化を招き、職にあぶれる若者が増加している社会環境の変化があり、バスケットボールという新たなスポーツへの関与はそうした状況に対処するローカル社会の人びとの実践として捉えることができそうである。以上の調査結果をふまえ、「野球移民」が出身社会とのあいだで抱える葛藤を新自由主義時代という文脈のなかで捉える意義を考察した論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度のフィールドワークにおいては、ドミニカにおけるバスケットボールの歴史と現状について、「野球移民」との関係性のなかで検討していく見通しをつけることができたことにより、今後の具体的な課題が明確になったと考えている。また、フィールドワークで得られた知見をもとに論文を執筆し、先行研究の議論のなかに位置づけて検討することができたという点で、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(2022年度)の調査・研究で明らかになった「野球移民」とバスケットボールとの関係性を軸にすえてフィールドワークを進めていく方針である。2022年度のフィールドワークでは、新自由主義の浸透と足並みを揃えるようにして、富の分配の対象が野球以外のスポーツに拡がっている実態が明らかになったが、「野球移民」が抱える経済倫理をめぐる葛藤を理解するうえで重要である。この点について理解を深めるために、バスケットボールリーグをパトロンとして資金援助をする「野球移民」ではない人たち(在米ドミニカ移民、会社経営者、商人)への調査も必要となる。また、実際にバスケットボールをしている若者が富の分配をどのように捉えているのについての調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画どおりに執行するなかで、必然的に生じる端数残による。
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