研究課題/領域番号 |
22K13266
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
窪田 暁 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (40643119)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 近代スポーツ / ドミニカ共和国 / 野球移民 / 贈与経済 / グローバル化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドミニカ共和国(以下、ドミニカ)からアメリカに渡るプロ野球選手(以下、「野球移民」)が出身社会に富を分配する際に抱える経済倫理をめぐる葛藤とそこから生みだされる新たなスポーツ実践の実態を明らかにするものである。2023 年度は、昨年度に引き続き8月から9月にアメリカのボストンおよびドミニカでのフィールドワークをおこなった。ドミニカでの調査では、昨年度の調査で把握した新たなスポーツ実践であるバスケットボールの概要をふまえたうえで、地方都市(バニ市)で組織されるバリオ(町、村)対抗リーグ戦に参加するひとつのチームの監督と選手へのインタビューを実施した。そこからは、バリオ代表チームを組織・運営するために必要な資金を、「野球移民」だけではなく会社経営者や商人、そしてアメリカ在住の移民などからの寄付を集め、その大半は選手に報酬として分配されていることが明らかになった。2014年からこのリーグ戦がはじまった背景には、新自由主義の浸透が経済状況の悪化を招き、職にあぶれる若者が増加している社会環境がある。「野球移民」をふくむ地域社会の人びとによって、若者がバスケットボールで稼ぐ機会が生みだされている事例からは、こうした社会状況の変化に対処するローカル社会の人びとの実践として捉えることができそうである。ボストンでの調査では、在米ドミニカ移民に対して故郷への送金についての聞き取り調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度のフィールドワークにおいては、前年度に把握したドミニカにおけるバスケットボールの概観から踏み込んで、特定の地区における具体的な実践について調査ができたことにより、今後の具体的な課題が明確になったと考えている。また、フィールドワークで得られた知見をもとに事典の原稿や共編著の執筆ができたという点で、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度(2023年度)の調査・研究で明らかになったバスケットボールリーグをパトロンとして資金援助をする「野球移民」ではない人たち(在米ドミニカ移民、会社経営者、商人)の関与について、引き続きフィールドワークを進めていく方針である。また、実際にバスケットボールをしている若者が富の分配をどのように捉えているのについての調査が進んでいないため、こちらも実施する予定である。
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