本年度は、各規範制定プロセスに対する統制の憲法的根拠・機能・限界を検討するという目的に照らし、ドイツ連邦憲法裁判所の判例に対する学説側からの応答の分析を主題とする計画であった。 本研究の主たる検討対象であるドイツ公法学においては、2020年以来のパンデミックへの対処という文脈において、本研究課題に関連する議論が展開・深化している最中にあり、それらの文献の調査を行った。その作業には相応の時間を要する結果となったが、パンデミックのような緊急事態にあっても、従来からの道具立てに基づいて法制度の構築と研究が行われていることが判明した。 その一方で、日本における命令の法律適合性審査の局面における理論的考察も並行して取り組んでおり、これについては研究会報告を行った。また、ドイツの最新の憲法判例として、政治財団の助成にかかる判例(Urteil vom 22.02.2023 -2 BvE 319 -)分析にも取り組んだ。これは従来法律による制度形成がなされていた領域に対して、ドイツ連邦憲法裁判所が法律の留保原則に基づいて立法化を命じた判決であり、判決そのものの論理のみならずその後の法制化の動きも、本研究にとって有益な資料となる。こちらについては、次年度の研究会報告・論説の公表を待つ状態にある。
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