研究実績の概要 |
ハロゲン化物イオン(塩化物(Cl-)・臭化物(Br-)・ヨウ化物(I-)イオン)と共存する陽イオン・陰イオンが気液界面プラズマのハロゲン生成特性に与える影響を実験的に調査した。実験の結果,塩化ナトリウム(NaCl)と硫酸ナトリウム(Na2SO4)の混合水溶液ではプラズマ照射による塩素の生成が観測された。NaCl水溶液では塩素の生成が観測されないこと,共存陰イオン(硫酸イオン,SO42-)がハロゲン生成に寄与しないことから,共存イオンの添加によりハロゲン化物イオンの界面濃度分布が変化する可能性が示唆された。 共存イオンおよびハロゲン化物イオン濃度を変化させたときの界面濃度分布を分子動力学(MD)シミュレーションにより計算した。共存陽イオンがランタンイオン(La3+)の場合について計算したところ,Cl-の界面濃度分布がLa3+の有無で変化する様子が観測された。また,NaCl, NaBr, NaI水溶液濃度が1.05, 2.1, 4.2 mol/Lそれぞれの場合で計算したところ,水溶液濃度が高いほどハロゲン化物イオンが気液界面の気相側に寄りやすいことが確認された。 さらに,ハロゲン化物イオンが気液界面の最表面にどのくらい存在するかの指標として,表面被覆率を導入した。新たに作成した表面被覆率の算出プログラムをNaCl, NaBr, NaI水溶液それぞれに用いたところ, I-の表面被覆率がBr-,Cl-の表面被覆率よりも大きいことが確認された。 以上から,共存イオンおよびハロゲン化物イオン濃度の変化を用いてハロゲン化物イオンの界面濃度分布を制御できる可能性が示唆された。適切な共存イオンおよびイオン濃度を選択することにより,短寿命極性活性種の液相浸透深さ(ひいては,気液界面における輸送メカニズム)をより詳細に調査できると考えている。また,表面被覆率の導入についても,実験にて観測されるハロゲン濃度とMD計算の結果を定量的に比較・検討する上で,非常に重要だと考えている。
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