本研究の目的は、電力変換器用のノイズフィルタを対象にして、感度解析を用いてノイズ伝搬経路を可視化することである。感度とは物性値に対する性能の変化量であり、電磁ノイズを解析する際には物性値としては透磁率・誘電率・導電率のいずれか、性能としてはSパラメータを選択する。昨年度の検討で誘電率の感度によって電界結合の経路を、透磁率の感度によって磁界結合の経路を、それぞれ可視化できることを示した。 最終年度は、まず昨年度成果の意義がより明解となるCLCLCフィルタでの追加検討を実施した。その結果、これまで得られていた透磁率の感度により磁界結合が表せるという知見に加え、透磁率の感度の正負により伝導ノイズのバイパス経路とメイン経路を把握できるという新たな知見を得た。また実製品のノイズフィルタでの感度解析を行い、誘電率の感度によってコイルの等価並列容量によるチョーク効果低減を、透磁率の感度によってバイパス経路の等価直列インダクタンスによるバイパス効果低減を、それぞれ可視化できることを確認した。また感度解析を用いた可視化結果をフィルタ設計・対策に反映する指針について整理を行った。 研究期間全体を通じて、従来の電界シミュレーションでは困難であった、性能に対して支配的な影響をもつ領域や要因の可視化を、感度解析を用いることで実現できることを示した。よって新たなノイズ解析手法を確立できたといえ、この手法をもとにした製品設計の効率化が期待される。
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