研究課題/領域番号 |
22K14401
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
土井 脩史 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 講師 (70779082)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中間領域 / ABW / コワーキングスペース / 設計実験 |
研究実績の概要 |
本研究では、ABWに対応した居住空間として「中間領域」に着目し、その役割と計画技術を明らかにすることを目的としている。中間領域の種類として、①住宅レベルの中間領域(縁側や土間等)と②地域レベルの中間領域(コワーキングスペース等)という2つのレベルに整理して研究を進めている。 ①住宅レベルの中間領域については、まず在宅勤務を行う家族像を想定した住宅の設計実験を行った。2名の建築家の設計提案においても中間領域が仕事場所の一つとして想定されていることを確認した。また、得られた設計提案を熱環境シミュレーションを活用することで、中間領域を維持したまま快適性や省エネ性を向上させることが可能であることを確認した。さらに、大阪の伝統的住宅(大阪長屋)における住まい方調査を実施し、主に冬期における中間領域の使われ方についてその実態を把握した。 ②地域レベルの中間領域については、コーワキングスペースを対象に研究を行った。コワーキングスペースは自宅とオフィスの中間的な働き場所として位置づけることができ、コワーキングスペース利用者がABWの概念に照らし合わせて仕事場所をどのように使い分けているのかを把握した。京都市都心部に位置するコワーキングスペース利用者を対象として、仕事場所の選択に関するアンケート調査・ヒアリング調査を実施した。その結果、対象コワーキングスペース利用者は、自宅での仕事と同じ内容の仕事をコワーキングスペースで行う傾向があること、自宅からの利便性の高さをコワーキングスペースに求める傾向があることなど、自宅とコワーキングスペースを選択的に使い分けるというニーズが存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
住宅レベルと地域レベルの中間領域について、それぞれにおいて順調に調査や実験を行うことができている。 住宅レベルの中間領域については、実地の住まい方調査と設計実験という2つの研究をすすめることができ、計画通りに進展している。一方、地域レベルの中間領域に関しては、2023年度に実施予定であった調査を先行的に実施することができた。しかし、現状ではサンプル数がやや少ない状況であり、2023年度に事例を増やして同様の調査を行う予定であることから、総合的に判断して(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
住宅レベルの中間領域については、省エネ性や快適性と中間領域計画の関係を見出すことを意図して進めている。設計実験の図面分析については、通風シミュレーションも活用して中間領域の計画手法の評価を行っていく予定である。また、大阪長屋を対象とした調査は冬期の住まい方を把握することができたので、中間領域の重要性が高まる中間期や夏期の調査を進める予定である。 地域レベルの中間領域については、コワーキングスペース利用者の仕事場所選択について調査を行ったが、サンプル数がやや不十分である。他のコワーキングスペース事例を対象に調査を行うなどのサンプル数を増やすことで、コワーキングスペースの位置づけを明確化したい。 また、2022年度は住宅レベル・地域レベルに中間領域を分けて研究を進めてきた。しかし、居住者の居場所の選択性を高めていくためには、それぞれの関係性が重要であり、住宅から地域へと連続する生活の中での中間領域の役割を明らかにしていくことを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍ということもあり、遠隔地での学会発表や実地調査の回数が予定よりも少なく、旅費の支出が少なくなった。2023年度には、中間領域を有する住宅事例の実地調査を計画しており、旅費の執行が増える予定である。また、コワーキングスペースの調査に関してはサンプル数を増やすために、調査会社に委託するWebアンケート調査を活用することを計画しており、Webアンケート調査にかかる費用を執行する予定である。
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