研究課題/領域番号 |
22K14401
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
土井 脩史 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 講師 (70779082)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中間領域 / ABW / 庭 / ワーク・エンゲイジメント |
研究実績の概要 |
本研究では、ABWに対応した居住空間として「中間領域」に着目し、その役割と計画技術を明らかにすることを目的としている。中間領域の種類として、①住宅レベルの中間領域(縁側や土間等)と②地域レベルの中間領域(コワーキングスペース等)という2つのレベルに整理して研究を進めている。
①住宅レベルの中間領域については、中間領域に隣接する「庭」について検討を行った。今回の調査では、在宅勤務者の庭の使われ方についてWebアンケート調査を行い、ABWに対応するという観点からみた庭の役割、意義について解明することを目的とした。調査の結果、在宅勤務開始後に庭の滞在時間が増えた人は全体の約20%に留まっていた。しかし、庭の滞在時間が増えた人の方が、在宅勤務場所と庭の関係性が強い傾向があり、在宅勤務中でも外部との繋がりを重視している実態が確認できた。さらに、庭の利用と仕事環境評価の関係については、庭の滞在時間が増えた人の方が仕事環境に対する評価が高く、ワーク・エンゲイジメントの評価も有意に高い傾向が確認できた。
②地域レベルの中間領域については、コーワキングスペースを含む地域内ワークスペースを対象としてWebアンケート調査を行った。地域内ワークスペースを自宅とオフィスの中間的な働き場所として位置づけ、ABWの概念に照らし合わせて地域内ワークスペースの役割を解明することを目的とした。調査の結果、地域内ワークスペースは、自宅内で仕事に集中しづらい人にとっての代替の仕事場所となる役割があること、オフィス以外に複数人の活動を行う場所としての役割があることが明らかになった。さらに、地域内ワークスペースの利用頻度が高い人では、ワーク・エンゲイジメントの評価が有意に高い傾向が明らかになり、地域内ワークスペースを効果的に活用していくことがABWの実現においても有効であると確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ABWに対応した居住空間の実現という観点から中間領域の役割と計画技術を解明することを目的としている。現在、中間領域を住宅レベルと地域レベルに分けて捉え、2つの研究を同時並行的に進めている。それぞれの研究を順調に進めることができ、一定の研究成果を上げることができたと評価していることから、(2)とした。 ①住宅レベルの中間領域については、今年度は中間領域と隣接する庭に着目して研究を進めた。ABWの実現という観点では、内部空間と外部空間の繋がりが重要であることを改めて確認することができた。 ②地域レベルの中間領域については、Webアンケート調査によって、仕事場所の使い分けの実態、地域内ワークスペースの役割を解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、中間領域を住宅レベルと地域レベルに分けて捉えたうえで研究を進めていく方針である。 ①住宅レベルについては、2023年度は「庭」に着目した研究であったが、外部空間と内部空間の繋がりこそが重要であると確認できた。この結果を踏まえ、外部と内部の中間領域にフォーカスを当てた研究を行っていく方針である。具体的には、在宅勤務者における中間領域とメンタルヘルスの関係についての調査を行い、ABWの実現という観点から住宅レベルの中間領域の役割を解明する。 ②地域レベルについては、Webアンケート調査によって、前年度のサンプル数の少なさという課題を解決することができた。今後は、アンケート調査の結果をより詳細に分析し、地域内ワークスペースの立地や計画内容と仕事場所選択の関係について考察を行っていく予定である。さらに、コワーキングスペースの実地調査並びに運営者へのヒアリング調査も併せて行う方針である。 ③ ①②を総合的に分析・考察することに寄って、中間領域の有効な計画技術の解明につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度においては、サンプル数を増やすためにWebアンケート調査を主な研究方法としたため、Webアンケート調査のための委託料が想定より大きな金額となったが、実地による実測調査の実施回数が計画より少なかった。そのため、実測機器の購入や研究補助者への謝金などの執行が予定より少なくなった。 2024年度においては、実地調査を増やしていくいことを想定しているため、実測に必要な消耗品費や旅費に充当する方針である。
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