研究課題/領域番号 |
22K14569
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
前田 啓明 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 助教 (10771446)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 配位ナノシート / 金属錯体 / トリプチセン / 薄層化 |
研究実績の概要 |
π共役系配位ナノシートは様々な電極材料としての応用が展開されてきているが、その高い平面構造による強い層間相互作用により容易に多層化し、機能性発現に重要な役割を持つ金属錯体部位が近接する層で遮蔽されるという課題があった。本研究では層間相互作用を抑制可能な配位子設計としてトリプチセン骨格からなる配位子を用いることを思い立った。本年度はトリプチセン骨格からなる配位子(ヘキサアミノトリプチセン)の合成、および配位ナノシートの気液二相界面を用いた合成を実施した。気液二相界面合成法により、ニッケルイオンとヘキサアミノトリプチセンからなる配位ナノシート(Ni-HATT)を獲得し、SEM/EDS、Raman分光法、X線光電子分光法、サイクリックボルタンメトリー、紫外可視吸光スペクトル、微小入射角X線散乱などの手法により同定した。また、Ni-HATTはトリプチセン骨格中のC-H結合が配位ナノシートの成す平面から直立するため層間相互作用が弱まることが期待される。Ni-HATTをイソプロパノール中に分散させ、超音波による剥離処理を行い、分散液をドロップキャストした。乾燥後の基板表面を原子間力顕微鏡で観察すると、6~7層程度に相当する膜厚約5 nmのシート構造が確認され、容易に薄膜化が行えることを示した。得られた成果について論文を執筆し、現在投稿中である。また、その他の金属イオンからなる配位ナノシートの合成検討を液液二相界面合成法、気液二相界面合成法にて進めている他、電解重合法による電極上への直接合成の検討も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の本年度目標であったトリプチセン骨格を持つ配位子を用いた配位ナノシートの合成と構造決定を達成した。加えて、層間相互作用を弱めた配位ナノシートが構築されたことを支持する実験的結果を得られ、ナノシートの設計指針が適切であったことが示唆され、これらの成果を論文として投稿するに至った。今回合成した配位ナノシートの機能性評価を行うための準備も進めており、概ね順調に研究が進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はNi-HATTの電極触媒や化学物質検出センサーなどへの応用を目指した機能性評価を進め、既存の配位ナノシート群との比較を通して、トリプチセン骨格を導入したことによる層間相互作用の抑制や平面四配位錯体のアキシアル位が空孔に向けて開放された化学構造の形成が機能性に与える影響を解明する。また、Ni以外の金属イオンを用いたバリエーションの拡張も進めたいと考えている。 加えて、今回合成した配位ナノシートはその化学構造から直径約2 nmの空孔を持つと予想される。この空孔にナノ材料を取り込ませてコンポジット化する事による機能性発現や高機能化を目指した検討を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
配位元素としてO、NH、Sを持つ3種類のトリプチセン配位子を合成し、目的の配位ナノシートが構築可能であるか検討する予定であったが、最初に合成したNHを持つ配位子(ヘキサアミノトリプチセン)を用いての配位ナノシート合成に成功したため、このナノシートにフォーカスして実験を進めた。その結果、予定よりも少額の経費で本年度の研究を進行できた。 次年度は配位ナノシートのバリエーションの拡張や機能性評価を進めることを予定しているため、合成に必要な試薬、器具類の購入や、機能性評価に用いる電極、測定器の消耗品、および共用機器使用のための使用料や測定施設への旅費などで経費を使用する計画である。
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