研究実績の概要 |
本年度は、本研究課題の主目的であるポリマーブラシを利用したパラドキシカル表面の作製に向けた合成技術の開発とそれを利用したポリマーブラシ/コポリマーブラシの量産に取り組んだ。ゾル-ゲル法によりシリコン基板上に作製した重合開始層を起点とし、空気中でポリマーブラシの合成が可能な改良型原子移動ラジカル重合法(Paint-on法)を用いて各種親水性モノマー(メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム、SPMK)、疎水性モノマー(アクリル酸 1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル、HDFDA)の重合を検討した。また、合成した親水性/疎水性ポリマーブラシを起点としたPaint-on法によるコポリマーブラシの合成も試みた。今回用いる重合開始層は、疎水性であり水の接触角ヒステリシスも小さいことから、一定時間経過しポリマーブラシが合成され表面が親水化されないと水系の重合溶液は濡れ広がることができない。疎水性ポリマーブラシから親水性モノマーを重合する場合にも同様である。このため、予備検討として従来型の水系Paint-on法の重合溶液を用いてポリマーブラシ/コポリマーブラシの簡易合成を試みたところ、均質な表面を得ることはできなかった。この解決のために、従来型の水系Paint-on法重合溶液に低表面張力のエタノールを添加し重合を行ったところ、重合溶液は重合開始層や疎水性ポリマーブラシのいずれにもよく濡れ広がり、より均質なポリマーブラシ/コポリマーブラシが合成できた。本手法で合成したpolySPMKブラシの水接触角(WCA)は10°以下、polyHDFDAブラシのWCAは110°、poly(HDFDA-SPMK)コポリマーブラシのWCAは40~60°程度であった。以上の結果から、Paint-on法重合溶液の改良とそれを利用したポリマーブラシ/コポリマーブラシの合成に成功した。
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