研究課題
タンパク質分解誘導剤PROTACは、標的タンパク質リガンドとユビキチンリガーゼ(E3)リガンドをリンカーを介して結合したキメラ分子であり、新たな創薬モダリティとして期待される。しかし、細胞膜透過性が低く、その向上のための修飾技術が求められる。そこで本研究では、PROTAC開発において共通性の高いE3リガンド部位に着目し、膜透過性を付与した細胞膜透過性E3リガンドを開発する。前年度に引き続き、PROTACに適用しうる膜透過性ペプチド部位の開発を行った。具体的には、高い疎水性を示すTP10を基にして側鎖に架橋構造を導入することで、結合した小分子化合物を高い効率で細胞内に導入可能な膜透過性ペプチドを開発した。さらに、本ペプチドは核酸、特にpDNAと混合した際に直径200-500 nmのナノ粒子を形成することを見出し、得られたナノ粒子は細胞内へエンドサイトーシスを介して取り込まれることを明らかとした。さらに今年度は、モデル標的タンパク質としてALK(anaplastic lymphoma kinase)融合タンパク質EML4-ALK、NPM-ALKを選択してPROTACを開発した。その結果、CRBNをE3として用いた際にはEML4-ALK、NPM-ALKに対して分解活性を示すものの、IAPをE3として用いた際にはEML4-ALKを選択的に分解することを見出し、リクルートするE3との組み合わせにより分解活性が変化することを明らかとした。
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