研究課題
薬物代謝酵素シトクロムP450(CYP3A4)は臨床で使用される医薬品の50%以上の代謝反応に寄与するため、患者における治療効果の獲得や副作用発現に大きく影響する。CYP3A4活性は数十倍の個人差が存在することが明らかとなっているほか、誘導薬や阻害薬の併用などの影響も受けるため、それらを考慮した投与量設計が重要となる。これまでに様々なバイオマーカー候補化合物(4β-ヒドロキシコレステロール、6β-ヒドロキシコルチゾール、1β-ヒドロキシデオキシコール酸など)が報告されているが、いずれのバイオマーカーが血中薬物濃度との相関が強いか明らかとなっていない。本研究では非侵襲的なCYP3A4活性予測法の開発と血中薬物濃度との関連性から見いだされる投与量設計法の開発を目的とした。はじめにLC-MS/MS条件、検体の前処理方法などを検討し、尿中内因性CYP3A4バイオマーカーである6β-ヒドロキシコルチゾール、1β-ヒドロキシデオキシコール酸ならびにそれらの基質化合物の一斉定量系を構築を行った。本測定系を利用して健常人の尿中バイオマーカー濃度を測定したところいずれも検量線範囲内に収まることが確認され、臨床研究につなげる有益な情報が得られた。現在、レンバチニブ、タクロリムス、ベネトクラクスなどCYP3A4基質薬物を服用している患者における血中薬物濃度と尿中内因性CYP3A4バイオマーカー量との関連を評価するための臨床研究を進めており、CYP3A4活性情報に基づいた至適投与量予測法の開発を目指している。
2: おおむね順調に進展している
尿中内因性CYP3A4バイオマーカー一斉定量系を構築し、特定の医薬品服用患者における血中薬物濃度との相関解析に向けた検体収集を継続できているため。
引き続き検体収集、血中薬物濃度測定、尿中バイオマーカーの定量を行い、相関解析を行う。血中薬物濃度測定については患者の服用タイミングを加味し、非線形混合効果モデルを利用してトラフ血中濃度を算出して評価し、採血同日尿中のバイオマーカー濃度との相関を解析する。投与量設計はステップワイズ法により血中濃度予測に有用なパラメータ精査のもと行う。
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