TIGITは、頭頸部がんの新しい免疫チェックポイントとして注目されている。そのリガンドはがん細胞の膜表面抗原のCD155とCD112である。本研究では、放射線治療を受けた症例の検体を用いてTIGIT-CD155・CD112の免疫チェックポイントの関与を確認すると同時に頭頸部がん動物モデルに対して抗TIGITモノクローナル抗体を用いた免疫チェックポイント阻害の併用で放射線治療の効果を増強できる事を証明する。さらに過酸化チタンナノ粒子との併用療法の免疫チェックポイント阻害に対して有効性を確認し、類を見ない免疫チェックポイント阻害療法・過酸化チタンナノ粒子・放射線療法のトリプル併用治療を検討する。放射線に対する免疫チェックポイントの分子機序に関しては、これまでのin vitroでの予備実験では複数の頭頸部扁平上皮がん細胞(数種類の頭頸部がん細胞(HSC-3、HSC-3-M3、SAS、SCCVII)に対して放射線照射すると、いずれの細胞においても、既知の腫瘍抗原であるPD-L1だけでなく、CD155、CD112の発現が増加することが確認できた。培養がん細胞単独の環境なので免疫チェックポイントの全体像とは言えないが、頭頸部がんではTIGITも重要な免疫チェックポイントである事を示唆している。頭頸部がんの腫瘍組織内におけるCD155、CD112 and TIGIT の関連に関して、頭頸部癌のTissue microarray slide を用いた実験結果から、正常組織には発現していない CD155、CD112 が、頭頸部がん組織のみで高発現し、その部位にT 細胞(CD3陽性)も浸潤しており、TIGITとCD155及びCD112の免疫チェックポイントが働いていることを確認した。
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