研究課題
2022年度に導入された即時適応放射線治療(ART)が可能なバリアン社製EthosによるART治療は,2024年2月29日現在で34例の症例で行われた.内訳は頭頚部3例(22 fraction, 22fr),肺3例(24fr),膵臓14例(106fr),胃MALT8例(121fr),子宮4例(36fr),骨盤2例(25fr)である.そのうち自由呼吸による治療は26.5%,残りは息止め併用の治療で,呼気息止め64.7%,吸気息止め8.8%である.呼気息止めは膵臓,胃MALTにて,吸気息止めは肺にて用いられている. 自由呼吸および息止めによる治療時間は,標的・正常臓器の描画時間,プラン作成時間においては差がないが,照射時間は自由呼吸で中央値2分,息止めで10分である.本研究年度では,胃MALT症例(1.8 Gy×17fr)においてART治療中の標的位置の変化について検討を行った.対象は3例の胃MALT症例(合計51fr).治療計画用画像①における標的(CTV1),および不確かさを考慮した照射体積(PTV, マージン設定は症例ごとに異なる)に対し,照射直前の確認用画像②上での標的(CTV2)の位置や線量指標がどのように変化するか検討した.①から2までの時間は中央値で17分だった.CTV1からCTV2の体積変化は29frで減少傾向だった.胃内部のガスが抜けたためだと考えられる.またPTV(CTV1にマージンを付与)に含まれていないCTV2は1%以下だった.現在,膵臓症例においても同様の検討を進めている.また通常リニアックによる同時曝射イメージングでは,呼吸同期照射を想定した実験体系を構築し,実験を行った.その結果,呼吸同期下においても照射中CBCT画像の画質は担保され,線量計算にも使用可能であることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
研究計画書と対象症例は異なるものの,ARTを実施した胃MALT症例においてマージンおよび線量指標の検討を行うことができたため.検討に使用した症例以外にもART症例は増加傾向であり,特に膵臓症例に関しては14例となり十分な症例数だと考える.また同時曝射イメージングではあらたな呼吸状態を想定した実験体型を構築し,その有用性を確かめたため.
実臨床で治療計画用CTが不要となるワークフローが可能なシステムは,現在までに安全に治療が行われている.治療計画用CTが不要となるワークフローに関する先行研究も報告されており,その実現可能性は高い.2024年度では2023年度に実施できなかった様々な診断CT装置やPET-CT画像での線量計算精度を評価する.また実臨床での膵臓症例の画像および治療データを用いて,治療計画用CTが不要となるワークフローのシミュレーションを行う予定である.
物品費で既存のものを利用できるものがあったため.2024年度にて英文校正費などに充てる予定である.
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Journal of Applied Clinical Medical Physics
巻: - ページ: 1-9
10.1002/acm2.14307
Physica Medica
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