研究課題/領域番号 |
22K15845
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
窪田 光 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (60824208)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 放射線治療 / 免疫チェックポイント阻害剤 / アブスコパル効果 / 免疫放射線治療 |
研究実績の概要 |
近年、放射線治療の技術的進歩は目覚ましく、強度変調放射線治療などの線量集中性向上や有害反応の軽減が実現されつつあるものの、特に局所進行がんでは治癒が困難な症例もしばしば経験する。しかし、近年免疫チェックポイント阻害剤が出現し、標準的な化学療法、放射線治療に併用する事で難治癌への治療成績改善が示され、さらなる新規治療開発が期待されている。我々のグループは放射線と併用することで大量の活性酸素を産生し、放射線増感効果を著明に増加させる過酸化チタンナノ粒子の開発に成功している。過酸化チタンナノ粒子は放射線照射により大量のROS を発生させることで放射線増感効果を得る。ROSは腫瘍免疫表現型を変化させることが示唆されており、免疫チェックポイント阻害剤の効果が増強する可能性がある。つまり、放射線治療と過酸化チタンナノ粒子に免疫チェックポイント阻害剤を併用することで、照射局所の治療効果を増強し、さらに免疫活性化により全身的なアブスコパル効果を誘導する新規免疫放射線治療戦略を確立することが本研究の目的である。3者併用療法(放射線治療+過酸化チタンナノ粒子+免疫チェックポイント阻害剤)の効果に関してin vivoで評価を行い、各治療法単独あるいは2者併用群と比較して、3者併用療法で著名な腫瘍増殖抑制効果を認めた。さらに3者併用療法に抗CD8抗体を併用する事で、その効果が減弱する事が判明した。つまり、腫瘍浸潤CD8陽性リンパ球がこの治療には欠かせない要素であることが示唆された。さらに治療後の腫瘍をフローサイトメトリーで評価を行い、3者併用療法において腫瘍浸潤CD8陽性リンパ球の著名な増加を認めた。CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球の増加が様々な癌種で予後良好因子と知られており、3者併用療法の有効性をより強く示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、本研究課題は概ね順調に進展している。 In vivoでの3者併用療法(過酸化チタンナノ粒子、放射線治療、免疫チェックポイント阻害剤)による照射局所における抗腫瘍効果は一定の実験結果が得られている。また、フローサイトメトリー解析により、照射腫瘍内に浸潤したリンパ球数やその分画を明らかにすることができた。また、腫瘍組織免疫染色でPDL1やケモカインの増強が確認されつつある。全体として、当初予想していた抗腫瘍効果や腫瘍免疫表現型の変化を確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、照射局所における抗腫瘍効果や腫瘍の免疫表現型変化を捉える事に成功している。今後はこのような照射局所の免疫表現型変化が全身性にはどのような変化をもたらすのかという点について研究を進めていく。特に二次リンパ組織における免疫応答を確認する。 研究推進のため本分野に精通した神戸大学放射線腫瘍科の研究者にも協力、助言を依頼する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外学会等への参加が困難であったことで、研究成果報告のための旅費や英文校正費用等の使用が予定通りではない。今後は国内外の学会参加費にも支出予定である。現在準備中の英語論文の投稿費にも支出予定である。また、文献調査、実験プロトコールの最適化を行ったうえで、さらなる研究物品、試薬を追加していく予定である。
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