研究実績の概要 |
【背景・目的】新生児仮死では、30~70%に急性腎傷害が起こり、神経学的予後不良及び死亡率に影響を与えると報告されている。しかし、その病態生理及び治療法についての報告は少ない。我々はこれまでに新生仔豚仮死モデルを用いて、水素ガス吸入療法と低体温療法併用療法が低体温療法単独に比して、運動機能回復効果が高い事を報告したが、脳以外の他臓器保護効果については検討されていない。新生仔豚仮死モデルの低酸素虚血負荷後の急性腎傷害の病理組織学的特徴及び、水素ガス吸入療法の腎保護効果について検討を行った。 【方法】生後24時間以内の新生仔豚20頭を、コントロール群(C, n=6)、低酸素虚血負荷群:(HI, 無治療24時間、n=8)、低酸素負荷+水素吸入療法群(HI-H2, 2.2-2.7%水素ガス吸入24時間、n=6)の3群に分け、蘇生終了後24時間治療後、HI負荷後5日目に臓器還流後、腎皮質領域の病理学的評価を行った。 【結果】HI群は、細胞増殖を伴った糸球体腫大と、尿細管上皮細胞の腫大を伴った近位尿細管内腔の狭窄を認めた。一方、HI-H2群は、それら糸球体腫大と近位尿細管内腔狭窄の有意な軽減を認めた。 【考察・結論】HIによる尿細管内腔狭小化による尿細管内圧上昇が糸球体細胞増殖を伴う腫大を引き起こしたと考えられ、水素ガスはそれらを軽減した。水素ガスは新生児仮死における腎保護治療としても有用である。
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