本研究は免疫チェックポイント阻害薬による肺障害の病態解明を目指している。これまでに臨床検体からえたデータをもとに血中HMGB1が高いことが免疫チェックポイント阻害薬による肺障害の発症リスクを上昇させることを確認しており、加えて担癌状態自体がHMGB1の上昇に寄与していることも確認している。これらを元に担癌モデルマウスに抗PD-1抗体を投与することでHMGB1と免疫チェックポイント阻害薬の肺障害の関連を明らかにすることを目指し研究を進めている。 現在、免疫チェックポイント阻害薬による肺障害を定量的に評価可能なマウスモデルの作成ならびに肺障害を定量するためのエンドポイントを決定するための条件検討を継続的に実施している。 現状までにマウスに移植するセルラインの選定を行うため、複数のセルラインを使用しマウスモデルを作成した。腫瘍の生育や肺転移の出現の有無に加え、肺における炎症細胞浸潤の有無などの観点から評価し、その結果使用するセルラインはLewis lung carcinoma(LLC)とすることに決定した。 現在はLLCを皮下移植したマウスに抗PD-1抗体を投与することで肺の炎症細胞浸潤やdry/wet ratio、ハイドロキシプロリン値など肺の障害や線維化を定量する指標の中で今回の研究に適した評価尺度の選定を行っている。これまでの検討から気管支肺胞洗浄液を用いた炎症細胞浸潤の定量では抗PD-1抗体による影響を定量的に評価することが困難な可能性があるため、現在は気管支肺胞洗浄液中や肺組織のホモジネートのサイトカインの定量を行うことを予定している。また肺組織を用いた免疫染色で肺のおける炎症細胞の局在や分画の変化も検討を予定している。
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