研究課題
慢性腎臓病は成人の7人に1人を占める新たな国民病と言われ、慢性腎臓病が進行し透析療法を受けている患者は本邦では約35万人にのぼる。成人の慢性腎臓病の原因の多くは糖尿病や高血圧などの生活習慣病が多いとされているが、約10%は慢性腎臓病の原因が明らかではない。本研究では、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析手法を用いて、本邦の成人の末期腎不全患者において、ネフロン癆を含めた遺伝性腎疾患が潜在する割合が明らかにすることを目的とした。のべ1100名以上が通院する複数の透析病院において、20歳から49歳の間に腎代替療法を開始し、慢性腎臓病の原因となる腎疾患が明らかでない患者90名を対象に、我々が開発した298個の遺伝性腎疾患の原因遺伝子の網羅的解析を行った。その結果、10名(11%)が遺伝性腎疾患と診断された。さらに、これらの患者は透析導入時に正確な臨床診断がされていなかった。本研究で診断された遺伝性腎疾患の中にはファブリー病やアルポート症候群など、早期診断および早期治療にて慢性腎臓病の進行を抑えられる疾患も含まれていた。本研究は慢性腎臓病を対象とした網羅的遺伝子解析として本邦で初めての臨床研究である。本研究の結果、本邦における成人慢性腎臓病患者の中に多くの遺伝性腎疾患が、診断されないまま潜在していることが明らかになった。小児と異なり、成人期に慢性腎臓病として発見される遺伝性腎疾患は、臨床診断が難しいことが示唆されており、網羅的な遺伝子解析が有効であることが示された。また、本研究では早期治療で慢性腎臓病の進行を抑えられる疾患も含まれていた。慢性腎臓病の原疾患が不明な場合、慢性腎臓病が進行する前に、遺伝子解析を行うことで正確な診断と適切な治療ができ、ひいては透析患者の減少につながる可能性が示された。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Kidney International Reports
巻: 9 ページ: 994~1004
10.1016/j.ekir.2024.01.027
Internal Medicine
巻: 62 ページ: 87~90
10.2169/internalmedicine.8707-21
日本小児腎臓病学会雑誌
巻: 36 ページ: 61~66
10.3165/jjpn.cr.2022.0213
https://www.tmd.ac.jp/press-release/20240215-1/