研究実績の概要 |
入手したヒト気道上皮初代細胞2系統(健常人中枢気道, COPD患者小気道由来の上皮細胞)について、Air-Liquid-Interface (ALI)培養でヒト上皮気道モデル作成を試みた。当初、気相液相界面培養後の気道上皮繊毛分化が安定しなかったが、マウス線維芽細胞(3T3J2)をfeeder cellとして使用するConditionally reprogrammed cells (CRC) 法を用いることによって安定した気道上皮モデル作成が可能になった。まず初めに感染がない状況でのヒト気道上皮モデル(中枢気道)における頂端側洗浄液および基底側培地の代謝物解析プロトコルを構築し、液体クロマトグラフ質量分析計を用いたワイドターゲット分析(親水性低分子代謝物144成分およびリン脂質867成分)によってそれぞれの代謝物プロファイルを評価した。リン脂質プロファイルに関しては定量のための適切な内部標準物質が設定されていなかったため主要脂質クラスの安定同位体を内部標準物質として登録するメソッド開発を行なった。続いて頂端側にM. abscessus(基準株ATCC19977)を感染させ、感染初期(24時間後)の代謝物変化を評価した。 ヒト気道上皮モデルの頂端側洗浄液からは(親水性低分子代謝物39成分, リン脂質13成分)、基底側培地からは(親水性低分子代謝物67成分,リン脂質6成分)がそれぞれ同定された。主成分分析によって両者のプロファイルは明確に区別された。頂端側にM. abscessusを感染させることによって、頂端側洗浄液中のO-Phosphoethanolamine, Arginine, Niacinamideが減少した一方で、Lactic acid, Choline, Pantothenic acidは増加した。
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