放射線事故時に生じる放射能汚染傷病者(放射性物質が付着している傷病者)に対応する救急・災害医学分野の医師・看護師や診療放射線技師などの関係者(以下、Emergency Medical Responders: EMR)は、傷病者から放出される放射線に晒されることになり、少なからず被ばくをしてしまう。本研究では、放射線実測実験や物理シミュレーション技術を駆使して放射能汚染傷病者に対応するEMRの被ばく線量予測アプリケーションを開発し、救急・災害医学分野における放射線安全管理の教育・体制整備に寄与するデータを提供する。 令和4年度の研究において、過去80年間に起きた放射線事故・原子力災害事例を解析し、放射能汚染傷病者の発生事例や対応者の被ばく線量を調査した。それらのデータを基にモンテカルロシミュレーションコードPHITSを利用した汚染傷病者の体表面の任意部位に自由に核種を設定し、対応する際のEMRの被ばく線量を算出することができた。また、シミュレーションデータをWindows/iOSで任意に呼び出せるアプリケーションの開発を令和6年度以降に実施する予定であったが、研究の進捗が順調であったため、Claris社製のFileMakerProにてアプリケーション開発にも年度内に着手した。
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