研究課題
本研究ではラット膝関節を用いたモノヨード酢酸(MIA)関節内投与による関節炎モデルにおける膝蓋下脂肪体(IFP)線維化に対するヒアルロン酸(HA)シート移植治療の効果を目的とした。10週令のWistar rat90匹を使用した。両膝関節にMIAを関節内注射後4日目に左膝に膝蓋下脂肪背面にHAシートを移植。右膝には移植しないsham手術を行った。我々は予備的な検討としてHAシートのIFPへの移植治療ラット死体膝を用いて検討した。関節内を内側傍膝蓋アプローチで展開し、IFPに移植できるHAシートの大きさを検討し、5mm×5mmの大きさが適切であった。移植方法としてHAシートは接着性良好であり、臨床的にも腹膜内に張り付けるだけで縫合処置など行っていない。評価方法は疼痛解析としてIncapacitance test、組織解析はHE染色、 Masson-Trichrome染色、Safranin-O染色。CGRP免疫染色。肉眼的に関節軟骨の評価。ELISAで関節液中のHAと IL-1β濃度を経時的に測定した。結果は短期間(2週時点)、長期間(4週時点)ともHAシート移植はIFP線維化を抑制された。短期間、長期間ともHAシート移植の方はCGRP陽性の神経終末の数が少なかった。短期間ではHAシート移植は関節軟骨の変性(破壊)が抑制されていたが、長期間では両側とも同程度に関節軟骨の破壊されていた。HAシート移植後の3日目以降から移植側のHA濃度が多くなり、7日、10日にピークになった。HAシートは膝関節内でIFPの後面に10日間までは残存した。HAシート移植後の7日目ではHAシートによる炎症抑制効果を反映してIL1-βの値は下がっていた。HAシートはIFP線維化を抑制し、疼痛を軽減される可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
研究結果をまとめ、論文投稿を行った。2023年3月にJournal or Orthopaedic Research (SCIジャーナル)に受理された。
HAシートによる膝蓋下脂肪体線維化の抑制効果が示され、また薬物動態的に関節内のHA濃度が約10日から2週間程度上昇することが示された。今後は本モデルを用いたHAシートと既存の治療方法であるヒアルロン酸関節内注射療法との比較などの検討を行っていく予定である。
コロナの影響で学会参加が制限され、旅費が予定より少なくなった。次年度は本研究を進めていくために実験試料・器具の購入、また学会活動も正常化したことから学会参加のための旅費などに使用予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
J Orthop Res.
巻: - ページ: -
10.1002/jor.25580.
Orthop J Sports Med.
10.1177/23259671231164122.