研究実績の概要 |
変形形性股関節症における滑膜マクロファージ(MΦ)は疼痛に関与すると報告されている。しかし、疼痛に関与するマクロファージのフェノタイプは明らかではなかった。申請者は昨年度までに滑膜組織におけるCD163+MΦの割合と疼痛スコアが相関すること、また、CD163+MΦは主要なTNF-alpha産生細胞であることを示した。しかし、疼痛惹起機構は不明であった。そこでCD163+MΦ由来の液性因子が疼痛関連因子の発現に及ぼす影響を検討した。人工股関節置換術時に変形性股関節症患者から滑膜組織を採取した。コラゲナーゼ処理後、セルソーターを用いてCD55陽性の滑膜線維芽細胞(CD45-CD31-CD55+CD90+)を採取した。滑膜線維芽細胞にTNF-alphaを添加後、LC-MSを用いて上清のプロテオーム解析を行った。その結果、疼痛への関与が報告されているセマフォリンファミリーに属するSEMA5A, SEMA7Aの上昇が認められた。また、TNF-alpha添加後の細胞からRNAを抽出し、real time PCRによるSEMA5A, SEMA7A mRNAの発現を検討した。その結果、プロテオーム解析結果と一致した結果が得られた。そこで、変形性股関節症患者から採取した滑膜組織におけるCD163の発現とSEMA5A, SEMA7A発現の相関解析およびこれらの発現とOA疼痛との完成の検討に着手した。現在、100例の解析を終えており、さらに100例を解析する予定である。
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