研究課題
マウスアキレス腱切離モデルを用いて、骨髄間葉系幹細胞(MSC)由来細胞外小胞(MSC-エクソソーム)がアキレス腱修復過程における石灰化や周辺組織との癒着を抑制し、その修復を促進することを明らかにした。そして、培養MSCの状態(継代数の違いによる細胞老化の程度)によってMSC-エクソソームの治療効果が異なり、それはMSC-エクソソーム表面に発現している糖鎖発現パターンの違いで評価できる可能性を示唆した(Hayashi Y et al. FEBS Lett 2022)。また、マウスアキレス腱切離モデルにおいて、あるアゴニストの局所投与が異所性骨化の抑制を介し、腱修復を促進させることを確認した。修復腱組織由来の細胞は、Screlaxis (Scx)陽性細胞ではなく、PDGFRa陽性など腱幹・前駆細胞が増殖してくることが明らかになり、これら細胞のペレット培養では、軟骨細胞への分化誘導が認められる一方で、アゴニスト添加によりペレットのサイズやサフラニンO染色による染色性の減少や、細胞形態から軟骨細胞への分化誘導が強く抑制された。今後さらに、腱修復機構を明らかにしていく。
2: おおむね順調に進展している
細胞系譜解析用のマウスも使用可能な状態となった。細胞系譜解析を順次開始しており、おおむね順調に進展している。
タモキシフェン投与のタイミング依存的に腱前駆細胞・腱細胞マーカーであるTppp3およびScrelaxis (Scx) 陽性細胞を標識できるTppp3CreERTdtTomato マウスおよびScrelaxis CreERTdtTomatoマウスを使用する。これら10週齢のマウスに、アキレス腱切離モデルの作製前および作製後にタモキシフェンを投与することにより、損傷前後で標識した細胞のアキレス腱修復時におけるScx陽性細胞およびTppp3の腱修復部位における局在を蛍光イメージにより明らかにする。そして、修復過程におけるTppp3やScx陽性細胞をイメージすることで、MSC由来エクソソームがTppp3やScx陽性細胞の遊走や分化にどう関与しているのかを明らかにする。また、各マウスの腱より細胞集団を単離し、シングルセルRNAシークエンス解析により腱修復に関与する細胞群を同定することで、MSC-エクソソーム投与による腱修復促進機構に一旦を探る。
予定していた解析を見合わせたために、次年度への使用額が生じた。生じた額は、次年度での消耗品費として使用する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
FEBS Lett
巻: 596(8) ページ: 1047-1058
10.1002/1873-3468.14333.