研究課題/領域番号 |
22K17410
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
三山 豪士 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 公衆衛生部, 主任研究員 (30846241)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | RSウイルス感染症 / 実効再生産数 / 感染症疫学 / 流行予測 / 地域間移動人流量 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、呼吸器感染症の時空間的感染拡大機構を解明すること、地域間移動人流量の変化等が感染拡大に影響する要因を分析すること、及び流行を早期に探知し予測することを目的としている。 時空間的感染拡大機構の解明:地域間移動人流量情報を加味した数理モデルの構築を目指しており、大阪府における地域間移動人流量情報を用いてRSウイルス(RSV)感染症発生情報への適合を実施している。地域間の人流情報(昼間人口)を加味した再生産方程式の定式化を試み、2021年の週別報告者数の時系列情報を適合させ実効再生産数を推定した。推定された実効再生産数を用いて、人流量が変化した場合の流行動態のシミュレーションを行った。また、差分方程式を用いて、人流量が地域間伝播に及ぼす影響についてもシミュレーションを行った。 感染症の流行予測:RSV感染症について2023年の流行予測を行った。コロナ禍において、世界的にRSV感染症の流行時期の変動が認められていたが、2021年以降は、欧米では流行期がコロナ禍以前の冬季に戻っている。今回、時系列SIRモデルを用いて大阪府のRSV感染症の流行予測を行った。コロナ禍以前の季節性(感染率)を用いた場合、2023年の感染拡大以前に流行期を予測することは困難(感染拡大が始まれば予測は可能)であった。欧米の状況と異なり、日本(大阪府)では2023年においてもコロナ禍以降からの流行期変動は持続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、呼吸器感染症の時空間的感染拡大機構を解明すること、地域間移動人流量の変化等が感染拡大に影響する要因を分析すること、及び流行を早期に探知し予測することを目的としている。本年度において以下の研究を行った。RSウイルス感染症の実効再生産数をモニターすることで流行の早期探知を行い、2023年の流行予測を行った。地域間移動人流量情報を加味した再生産方程式の定式化し、一時点の地域間移動人流量情報(2020年における昼間人口)を用いて地域別報告者数の適合を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、地域間移動人流量情報を加味した数理モデルの構築・定式化を行い、呼吸器感染症の時空間的感染拡大機構について分析することを研究目的の一つとしている。来年度以降は、モバイル端末GPS情報から集計した地域間移動人流情報を用いたモデルを作成し、昼間人口人流情報を用いた場合との比較を行う。また、来年度はSIRモデルを用いた定式化と地域別報告者数の適合を試みる。地域別報告者数が適合可能であれば、時間別の地域間移動情報を利用して流行時期別に伝播パラメータを推定する。複数のシナリオを設定し、地域間移動人流量の変化や介入による感染伝播率の変化等が感染拡大に及ぼす影響を定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
地域間移動人流情報の購入予定額が予算を上回り、解析用コンピューターの購入を翌年度に繰り越したため次年度使用額が生じた。使用計画として、解析用コンピューターの購入その他、論文投稿費、学会発表に係る経費等に支出予定である。
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