研究課題
高リン食摂取や慢性腎臓病(CKD)に伴う高リン血症などのリン負荷は様々な臓器において細胞傷害を誘導し、老化や血管石灰化などのミネラル関連疾患を進展させる。多くの細胞はNa依存性リン酸トランスポーターPiT1およびPiT2を発現する一方で、リン酸排出トランスポーターXpr1を発現する。また、腎臓近位尿細管はNaPi2aおよびNaPi2c、小腸上皮細胞はNaPi2bを発現し、生体の血中リン濃度調節に機能する。本研究は各組織でのXpr1がリン酸排出によって細胞内リン酸蓄積を防ぎ、リン酸毒性を軽減する機序が存在すると仮説をたて解析した。令和5年度は、1)高リン血症を呈するKlothoノックアウト(KO) マウスにおける各臓器におけるXpr1遺伝子発現変化をreal time PCRで解析した。肺、血管および腸管でXpr1発現増加傾向、頭蓋骨や大腿骨でXpr1発現減少傾向がみられ、高リン血症もしくはKlothoシグナルの欠失により、各組織においてリン酸代謝動態が変化する可能性が示唆された。2)前年度に作成した近位尿細管Xpr1 KO細胞株解析では、NaPi2aおよびNaPi2c発現が低下し、リン酸排出能だけでなくリン酸取り込み活性減少がみられたが、3時間リン酸排出後に細胞内に残存するリン酸量が野生型細胞株よりも有意に増加することを認めた。Xpr1 KO株の高リンメディウムおよびCalciprotein particle (CPP) に対する毒性感受性を検討したところ、野生型細胞株と比較して有意に細胞数減少が認められたことから、リン毒性感受性が亢進することがわかった。これらの結果より、Xpr1がリン酸排出およびリン酸取り込み制御を介した細胞レベルのリン酸恒常性調節によってリン酸蓄積を防ぎ、高濃度のリン酸およびCPP抵抗性に寄与する可能性が示唆された。
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