研究課題/領域番号 |
22K18186
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白木川 奈菜 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(RPD) (90724386)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再生医療 / 肝臓 / 細胞外マトリックス / 肝障害 |
研究実績の概要 |
肝臓移植医療において世界的なドナー不足であり、代替法として肝組織を新たに構築する肝再生医療が希求されている。本研究では、肝細胞の生着・増殖・機能発現に適した環境を設計するという発想のもと、肝臓内への肝細胞と肝臓由来細胞外マトリックス(Extracellular Matrix;ECM)のダブルインジェクションにより、低侵襲かつ迅速に肝組織を構築することを目的とする。肝組織内でゲル化する肝ECMを開発し、腸管血流の供給、増殖因子等の固定化、増殖スペースの確保、という肝細胞に適した微小環境を作製する。肝細胞/ECMをダブルインジェクションし、マウス・ラット肝臓の複数個所に肝組織を構築する。 1年目である2022年度は肝臓内でゲル化可能な肝ECM基材の開発を行った。ECMの主成分であるI型コラーゲン、コラーゲンを熱分解して得られるゼラチン、肝臓を脱細胞化して可溶化して得られるブタ由来肝ECMを用いた。肝臓内部に細胞外マトリックスゲルに包埋された肝細胞を移植するために、インジェクションによりゾル状態で注入し、肝臓内部でのゲル化を目指した。I型コラーゲンゾル、または肝臓由来細胞外マトリックスとゲニピンの混合物を、中性化及び、肝臓内において37℃環境下静置によりゲルを形成することに成功した。さらに、ゼラチンとゲニピンを混合することにより、肝臓内における生体環境下でゲルを形成することに成功した。 以上より、インジェクションにより肝臓内に細胞外マトリックスゾルを注入し、内部でゲル化させる手法を開発した。 さらに、染色したマウス初代肝細胞をI型コラーゲンに包埋してインジェクションにより70%部分肝切除を施したマウスの肝臓に移植した。肝臓内部でゲルが形成され、ゲル内部に染色した肝細胞が見られたことから、肝細胞とECMのダブルインジェクションにより肝細胞を移植できることが期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目である2022年度は肝臓内でゲル化可能な肝ECM複合基材の開発を予定していた。肝ECMは脱細胞化肝臓を可溶化することで得られ、4℃で酸性かつゾル状であり、中性化して37℃にするとゲル化する。しかし、肝臓内においては血液等の液体や細胞が空間を満たしており、その中で空間を確保しながらゲル化する必要がある。1年目はブタ由来肝ECMの取得方法を改良することでECM濃度を上げるとともに、ECMの主成分であるコラーゲンやゼラチンを混合することでゲル強度の向上と肝臓内でゲル化可能なECMの開発を行う予定であった。肝ECMの取得方法の改良の検討において凍結乾燥の工程が、取得する肝ECMの状態に大きく影響することが判明した。そのため、安定した基材作成を行うべく、肝ECMの安定生産と大量作製のために2023年度に導入を予定していた凍結乾燥器を前倒しで導入し、現在検討を進めている。一方で、植物由来の天然の架橋剤であり、グルタルアルデヒド等の非天然架橋剤より毒性が低いゲニピンに着目した。I型コラーゲンゾル、または肝臓由来細胞外マトリックスとゲニピンの混合物を、中性化及び、肝臓内において37℃環境下静置によりゲルを形成することに成功した。さらに、ゼラチンとゲニピンを混合することにより、肝臓内における生体環境下でゲルを形成することに成功した。また、開発した基材を用いた肝細胞培養による機能発現評価についても2022年度に予定していたが、こちらは現在検討中である。 他方、次年度予定していた70%肝切除マウスに対する移植検討に関して、インジェクションにより肝臓内部でECMをゲル化することに成功した。さらに、染色した肝細胞を用いて、移植肝細胞を観察できることが期待された。 以上のことより、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、引き続き肝ECM取得方法の改良を行い、より高いECM濃度のゾルを作製し、コラーゲンとの混合比率の検討を進めると共に、ゲニピンを使用する場合のゲニピン濃度の低減を目指す。また、開発したECMゲルを用いて肝細胞を培養し、肝機能発現に関しても検討を行う。そして開発した肝ECMを用いて、肝細胞/ECMダブルインジェクションによるマウス肝臓内における肝組織構築を行う。肝疾患患者体内と同様の肝細胞移植環境を再現するため、70%肝部分切除もしくは肝障害(薬剤性肝硬変)モデルマウス・ラットを作製する。初代肝細胞もしくは肝前駆細胞を肝ECMゲルと複合し、肝臓内に移植して肝組織構築を試みる。肝臓の数箇所に肝細胞/ECMダブルインジェクションし、生体内における肝組織構築を検討する。移植後1~2週間程度まで肝臓内に作製した肝組織を回収する。免疫組織化学的評価から、形成肝組織サイズ、移植肝細胞の増殖(Ki67等)、組織 構造(接着因子、肝毛細胆管、肝細胞極性等)、機能発現(肝転写因子、アルブミン、CYP等)を評価し、肝組織形成の過程を明らかにする。 以上の検討を通して本研究が提唱する肝細胞/ECMダブルインジェクションによる迅速な肝組織構築法を開発し、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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