研究課題/領域番号 |
22K18318
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
伏屋 雄紀 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00377954)
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研究分担者 |
勝野 弘康 金沢大学, 学術メディア創成センター, 准教授 (70377927)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | チューリング・パターン / ビスマス単原子層 / 結晶成長 / パターン形成 / 反応拡散方程式 |
研究実績の概要 |
これまでに我々は,ナノスケールのチューリング・パターン形成には,3種類の原子間ポテンシャルが重要な役割を果たすことを明らかにした.これらを構成要素とする原子変位の時間発展方程式を導出し,チューリング・パターンを得るシミュレーション法を開発してきた.今年度は,この方法をより現実の系に近く,より精度の高いシミュレーション法を確立するために,分子動力学法を用いた方法の開発を行った.NbSe2基板上のBi単原子層を想定して,Bi-Bi間およびBi-Se間の原子間力(レナード・ジョーンズ型)を考慮したシミュレーション法を実装した.開発したコードを用いて,実験で確認されているBi原子の三角格子と一致する結果を得た. さらに,現実の結晶成長を想定して,アニーリングによる結晶の高純度化についてもシミュレーションを行った.上昇させる温度や,温度の時間変化率に最適な条件があることがシミュレーションにより明らかとなった. 第一原理計算によるシミュレーションも行った.Bi薄膜の構造最適化を行ったところ,表面に近い数層は面間距離が長くなるということを明らかにした.さらに,バルクのBiでは,面間距離が長くなると,トポロジーが転移することも明らかにした.これらの結果より,Bi薄膜では,バルクとは異なるトポロジーが観測される可能性があることが分かった.チューリング・パターンの判別法について,2次元高速フーリエ変換を用いることにより,従来の回折パターンとは異なるパターンが得られることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画を前倒しして,分子動力学法と第一原理計算によるシミュレーション開発を行えたため,今年度はさらに両者を用いた具体的研究を進め,いくつかの成果を得ることができた.さらに,実空間でのチューリング・パターンの判別法についても,新しい回折パターンを得るという進展があった.以上のことから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に沿って,研究を進める.分子動力学法では,2体ポテンシャルに加え,3体ポテンシャル(結合角ポテンシャル)を取り入れる.構造解析と評価については,画像解析の方法を確立し,チューリング.パターンの実空間での判別についての研究を進める.解析法の確立と並行して,パターン形成の実験研究も進むように,実験グループとの連携を深める.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた物品購入は,物価高騰と円高などの遠因により,予算とスペックが見合わなかったため,購入を見送った. 博士研究員を採用予定であったが,適任者がいなかったため,採用を見送った. 次年度以降,研究の進展に合わせて,物品を購入し,博士研究員の採用を検討し,適切に予算を執行する.
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