研究課題/領域番号 |
22K18560
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田口 敦子 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 教授 (70359636)
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研究分担者 |
梅垣 佑介 奈良女子大学, 生活環境科学系, 専任講師 (00736902)
岸 恵美子 東邦大学, 看護学部, 教授 (80310217)
石川 志麻 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 講師 (50598919)
加藤 由希子 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 特任助教 (00903329) [辞退]
平野 優子 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 助教 (70459246)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 援助要請 / 地域在住高齢者 / 社会的孤立 / ライフヒストリ―法 |
研究実績の概要 |
【背景】1) 援助要請しない高齢者の人生において援助要請しない状況に至った心理的要因、2)身体的・精神的問題が生じた際にその高齢者が発する微妙な援助要請兆候を明らかにすることを目的にインタビュー調査を行った。また、援助要請しない高齢者の定義を、「高齢者の身体的・心理的問題に対してサービス利用が必要と専門職は判断したが、受け入れて貰えなかった者」とした。 【方法】都内の地域包括支援センターの専門職3名(いずれも社会福祉士)に「以前は援助要請しなかったが、現在は何らかの支援に繋がった地域在住高齢者」を紹介して貰った。高齢者宅で半構造化インタビューを実施し、援助につながった経緯や援助を求めなかった理由、幼少期からこれまでに援助要請しない考え方に影響すると考えられることを尋ねた。 【結果】対象者3名は80代2名、60代1名であり、女性2名、男性1名であった。専門職が必要と考え提案したサービスは、成年後見制度、家事支援、受診と多様であった。援助要請の兆候と捉えられた対象者の発言は、「そろそろ自分が死んだときのことが心配」「掃除が厳しくなってきた」「兄に迷惑をかけられない」等であった。また、援助要請しない理由として「まだまだ(自分で)できる」「今まで親子で生活してきたので、なるべく別の人に頼りたくない」であった。また、自分の置かれている環境を受け入れていたため「困っている感じがしなかった」ことや、戦後の貧しい経験から行政サービスに対して「もったいない」といった語りがあった。 【考察】援助要請・援助行動に至るプロセスモデルの初期段階に、「自己の問題への気づき」や「問題の重大性の評価」がある(高木,1997)。今回、これらの気づきや評価において、高齢者と専門職とのギャップがある可能性や、高齢者の長年のライフスタイルや過去の経験が影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
身体的・精神的問題に対して援助要請しない高齢者とその高齢者に関わった専門家に、10名程インタビューを行う予定であった。2024年3月現在で、専門家へのインタビューは6名終えたが、高齢者へのインタビューは3名のみであり難航している。高齢者とは信頼関係を構築しながら話を伺うため時間を要しているため、計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
かつて援助要請しなかったが、現在はサービス機関の利用に至った地域在住の高齢者本人(以下、当事者)と、そこに関わりをもつ専門家(医療職・福祉職)を 対象にインタビューを引き続き行う。今年度は10ペアを目標とする。 2024年3月現在で、専門家へのインタビューは6名、高齢者本人へのインタビューは3名と難航している。この推進方策として、複数機関にアプローチを行うことで対象者を増やしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は高齢者本人と専門家へのインタビュー調査を10例程度進める計画であった。専門家へのインタビューは6名実施できたものの、高齢者本人のリクルートが難航しており、3名のみである。高齢者との関係構築に時間を要するため、次年度は複数の対象機関に呼びかけを行い、進めていく計画である。
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