研究実績の概要 |
①希薄気体流れにおける複雑境界・特異境界値問題の中でも空間対称性の高い円板周りの流れについて,特性曲線法をベースとした数値解析手法を発展させ,スーパーコンピューターにおける大規模並列計算に適応するよう開発を進めてきた.特に,円板から離れた遠方における漸近形をボルツマン方程式の漸近解析を用いた手法で求め,遠方場の条件に対する数値計算上の有限領域の制約から生じる誤差を低減する工夫を実装している.さらに,円板尖端近傍において尖端からの距離に応じた巨視量の振舞いに着目することで,流れ場によって生じる温度分布の形成,いわゆる熱分極効果に対する尖端部分の影響が明らかになりつつある.これは特性曲線法を用いることで精密な数値解析を行ったことで初めて得られる結果であり,本年度の主要な実績である(論文準備中). ②本課題の最終目的にて,発熱するヤヌス粒子の周りの流れに対する精密数値解析とその実験との比較を目指している.その実験部分の第一段階として,周囲流体の加熱に伴うマイクロ粒子周りの流れを可視化する実験を行った.ただし,可視化の困難さからこの実験は液体中で行っており,現在は気体中の実験に向けて拡張を計画している.可視化における工夫として,光ピンセットを用いたトレーサ粒子の捕捉を応用し,熱的に誘起される微小流れの検出に成功し論文発表を行った(T. Tsuji, S. Mei, S. Taguchi, "Thermo-osmotic slip flows around a thermophoretic microparticle characterized by optical trapping of tracers", Phys. Rev. Appl. 20, 054061, 2023).本成果は京都大学からプレスリリースされ,米国物理学会発行のオンラインマガジンPhysicsで紹介された.
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