研究課題
キラリティー(物質の立体構造がその鏡像と空間的に重ならない性質)は物質科学における普遍的テーマである。広く存在する螺旋はキラリティーを持つ構造(秩序)の一つである。光渦とは、螺旋波面に由来する軌道角運動量と螺旋波面の向きで決まるキラリティーを持つ光である。光渦を物質に照射すると軌道角運動量が作用してキラルな質量移動が起こり、物質表面にサブミクロンスケールの螺旋構造ができる。しかしながら、これまでの螺旋構造に関する事例のすべては、物質表面あるいは物質同士の界面に限定されていた。これまで物質内部に光渦による3次元的なキラル構造を形成した事例はない。学理の解明と応用展開に向けて、光渦を光硬化樹脂中に集光照射したときに形成される螺旋ファイバーに注目し、その内部構造を定量的に評価した。内部構造を評価するには、まず、作成したファイバーをセル中で固定する必要がある。そのため、セルに封入した光硬化樹脂を紫外光照射でプレ重合することであらかじめ樹脂の粘度を極限まで高め、一光子吸収過程で試料セル両端に固着された螺旋ファイバーを形成した。この螺旋ファイバーにガウスビームを入射すると、螺旋ファイバーの内部構造を反映した光渦モード発生が観測された。この事実は光渦による物質の内部改質を明確に示唆するものである。螺旋ファイバー中の光伝播をLPモード近似を用いて解析した結果、ガウスモードと光渦モード間のエネルギー交換は、約110μm間隔の周期的な捩じり構造が存在しないと起こらないことが分かった。この結果は、実験的に観測された透過光の回転数から評価できる捩じり周期100-120μmとほぼ一致する。したがって、螺旋ファイバー内部には周期的な屈折率の捩じれ構造が形成されていることが予想される。当初予定していた物質内部の捩じれ構造形成の目標に対する一定の達成度と知見を得た。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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