研究課題/領域番号 |
22K18994
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宇野 正起 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (50748150)
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研究分担者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40422092)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 鉱物炭酸塩化 / 反応誘起破壊 / 透水率 / ブルース石 / マグネサイト / 蛇紋岩 |
研究実績の概要 |
本年度はペリクレース(Mg0)およびペリクレースを吸水させて生成したブルース石(Mg(OH)2)を用いた反応透水実験,および天然のブルース石に富む蛇紋岩,および通常の蛇紋岩のバッチ式反応実験をおこなった. 反応透水実験では封圧20MPa,流体圧約10MPa,200℃の条件下で超臨界CO2を試料に注入した.その結果,無水状態(MgO)では反応はほとんど進まないのに対して,含水状態(Mg(OH)2)では劇的に反応が加速しマグネサイト(MgCO3)が生成することが明らかになった.また,含水状態(Mg(OH)2)では,反応により固相の体積が増加し空隙が減少したにも関わらず,透水性が反応とともに向上する傾向がみられた.これは,ブルース石(Mg(OH)2)の空隙サイズが1 um以下と小さいのに対して,反応後のマグネサイト(MgCO3)は粗粒であり空隙サイズが10 um以上と大きくなっていることが原因と考察された.さらに,含水部分であるブルース石の分布が不均一であるサンプルでは,ブルース石が選択的に炭酸塩化することにより亀裂が生成し,透水性が向上することが明らかになった. バッチ式反応実験では,試料を90-200℃において,10 MPa CO2飽和水および蒸気圧下の1M NaHCO3水溶液と反応させた.その結果,NaHCO3水溶液では高温ほど反応量が増加すること,CO2飽和水では高温ほどブルース石の溶解が抑制され蛇紋石の反応性が向上することが明らかになった.さらにNaHCO3水溶液では,150℃および200℃において顕著な巨視的な亀裂生成が観察された.これは蛇紋岩の炭酸塩化反応実験で,明瞭な巨視的な亀裂を生成した初めての報告である.試料の詳細な解析により蛇紋岩の炭酸塩化における亀裂生成プロセスが明らかになりつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
反応透水実験,バッチ式反応実験ともに,炭酸塩化による岩石破砕に成功しており,炭酸塩化における岩石破砕・透水性向上プロセスを捉えつつある.炭酸塩化による明瞭な透水性向上,蛇紋岩の炭酸塩化による巨視的な亀裂生成を実験的に示したことは世界的にも先駆的な成果であり,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
反応透水実験については追試験をしてデータの傾向を確固たるものにするとともに,温度や封圧などの条件を変えることで,透水性が向上する条件を探索する.バッチ式反応実験については,試料の微視的な解析をおこなうことにより,亀裂生成プロセスを制約する.また,長期間の反応実験により系の時間発展を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍およびウクライナ情勢のために実験装置の納品が当初より遅れたため,一部の実験を来年度に持ち越した.そのため,必要な実験消耗品用の予算を来年度にまわしている.
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