研究課題
脂肪細胞によって生成される癌の生物学的活性を制御因子を同定する実験については、マウス由来初代脂肪細胞の樹立を鋭意進めている。プロテオミクスおよびリピドミクス解析を実施するための純度の高い培養脂肪細胞が未だ十分量得られていないため、培養条件や分離法を含めて改善を図っている。本年度は、初代培養細胞の樹立に並行して、脂質酸化によって誘導されるプログラムされた細胞死であるフェロプトーシスと長鎖脂肪酸との関連に着目した実験を実施した。その結果、必須脂肪酸であるリノール酸(LA)およびα-リノレン酸(αLA)が、すい臓がんの細胞株において、脂質過酸化を増加させ、細胞死を誘導することを培養細胞の実験から明らかにし、欧文誌に報告した(Sci Rep 2023)。この結果はLAやαLAなどの不飽和脂肪酸が抗がん作用を有し、今後様々な癌治療の有望な標的となる可能性を示しており、そのメカニズムの詳細について引き続き検討を加えている。上記に加えて、メラノーマ細胞株における脂質代謝制御に関与する脂肪酸結合タンパク質(FABP7)が、メラノーマの遠隔転移を抑制的に制御していることを、マウスへの移植実験モデルを使って明らかにし、論文投稿を行った。さらにウコンに含まれるクルクミンの類似物質(GO-Y022)が、制御性T細胞の作用調節を介して癌細胞の細胞死を誘導することを突き止め欧文誌に報告した。この結果は、GO-Y022が抗腫瘍効果を有する可能性を示している。
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Sci Rep
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