研究課題
本年度は、骨格筋AMPキナーゼ(AMPK)の脳機能調節への寄与を検討するために、骨格筋特異的にAMPKα1ドミナントネガティブ変異体を発現する(AMPK-DN)マウスを用いて、行動学解析ならびに生化学解析を実施した。2-3月齢の野生型ならびにAMPK-DNマウスを用いて、オープンフィールド試験・高架式十字迷路試験・Y迷路試験・バーンズ迷路試験・強制水泳試験を実施することで、骨格筋AMPKが自発運動・情動・学習機能の制御に関与している可能性を検討した。その結果、高架式十字迷路試験において、AMPK-DNマウスはオープンアーム侵入回数・滞在時間の増加、クローズアームでの滞在時間の低下を示した。したがって、骨格筋AMPKが不安様行動の調節に関与していることが示唆された。骨格筋AMPKが脳機能調節に関わるマイオカインの発現制御に関与している可能性を検討するために、野生型およびAMPK-DNマウスの骨格筋におけるマイオカイン遺伝子発現量を検討した。その結果、AMPK-DNマウスの足底筋およびヒラメ筋において、fibronectin type III domain containing 5(Fndc5)の発現量が低下していた。骨格筋AMPKが情動を調節する分子機序を探索するために、関連脳領域である海馬・視床下部の遺伝子発現解析を実施した。その結果、AMPK-DNマウスの海馬において、脳由来神経成長因子ならびに興奮性シナプス分子の発現増加が観察された。一方で、視床下部の神経活動マーカーならびにニューロペプチドの遺伝子発現量に関しては、統計学的に有意な変化は検出されなかった。以上より、骨格筋AMPKはマイオカイン発現調節に関わるとともに、海馬の神経可塑性ならびに情動制御に関与している可能性が示された。
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Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle
巻: - ページ: 1-14
10.1002/jcsm.13444
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 684 ページ: 149141~149141
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