研究課題/領域番号 |
22K20040
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
阪本 章子 関西大学, 外国語学部, 教授 (40964705)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | オンラインアンケート調査 / 先行文献リサーチ / 質問票作成 / データ収集 / データの予備的分析 / 翻訳者 / 労働生活 |
研究実績の概要 |
本研究は、翻訳業で生計を立てる労働者(翻訳者)の労働生活の質(Work-Related Quality of Life:WRQoL)を、【1】測定尺度の作成、【2】その尺度をつかったアンケートの実施・データ分析、の2つのフェーズを通じて測定することを目指す。第1フェーズにあたる当該年度は、[1]先行文献リサーチ、[2]ドラフト質問票の作成、[3]質問票の精査、[4]完成した質問票をつかったオンラインアンケート(「翻訳者WRQoLアンケートVer.1」)の作成、[5] 翻訳者WRQoLアンケートVer.1の実施とデータ収集、[6]データ分析、[7]分析結果にもとづくアンケート(「翻訳者WRQoLアンケートVer.2」)の設計、を予定していた。このうち、[1]~[6]の一部まで進捗した。
[1]先行文献リサーチ、[2]ドラフト質問票の作成、[3] 質問票の精査は、研究協力者1(アイルランド)・研究協力者2(英国)・研究協力者3(英国)とのオンライン協働を通じて行うことで、研究の厳密性を高めた。また[3] 質問票の精査には、英国のプロ翻訳者9人に専門分野エキスパートとしての参加協力を得ることで、翻訳業界の実態をよりよく反映したドラフト作成が可能となった。[4] オンラインアンケート作成は、心理学的アンケートの専門家である研究協力者3の知見を反映させることで、回答の途中棄権率を低く抑えることができた。[5]アンケート実施とデータ収集(N=77、英国のプロ翻訳者)では、研究協力団体である英国翻訳通訳者協会(ITI)を通じて行うことで、個人情報を得ることなく適切な対象グループからデータ収集ができた。[6]は、統計の専門家である研究協力者3とともに行うことで、分析の厳密さを担保することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね順調に進捗したが、[6]データ分析・[7]分析結果にもとづく「翻訳者WRQoLアンケートVer.2」設計に関しては、ふたつの理由から遅れが出ている。 まず、[5] 翻訳者WRQoLアンケートVer.1の実施・データ収集では、研究協力団体である英国翻訳通訳者協会(ITI)の協力を得ることで、適切なデータ収集が行えた。しかし、ITIは自らが実施するアンケートや外部団体アンケートなど、多くのアンケートを会員対象に実施しており、本研究のアンケートについては他アンケートとの重複を回避するために、実施時期を当初予定より1か月遅らせるよう要請を受け、それを受け入れた。 また、[4]「翻訳者WRQoLアンケートVer.1」の作成の段階で、翻訳者の労働環境に影響を与える要因が予想以上に多いことが判明し、これに合わせてアンケートの質問数も多くなることが分かった。研究協力者3(心理学と統計学の専門家)と話し合った結果、1度の大きなアンケートではなく、2度に分けた比較的小さいアンケートの実施のほうが、回答率向上と途中棄権率軽減に役立ち、最終的なデータの質向上につながると判断した。 これら2つの理由から、「翻訳者WRQoLアンケートVer.1」は2段階に分けて行うこととし、2度目のアンケート(翻訳者WRQoLアンケートVer.1')は次年度に持ち越すことになった。この2度目のアンケート実施が終了した時点で、[7]「翻訳者WRQoLアンケートVer.2」の設計を行うことになる。これにより、より確実なデータ収集と精密なデータ分析が行え、研究の質も向上すると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
「翻訳者WRQoLアンケートVer.1」を2段階に分けて行うよう予定変更したため、2度目のアンケート実施が第2フェーズ前半に加わることとなる。このアンケートを滞りなく実行し、第2フェーズの予定を2023年度のできるだけ早い時期に開始することを目指す。
第1フェーズの結果について研究協力者との国際共著論文の2023年度中の発表を目指す。また、国際学会の招待講演の依頼を受けている(2023年9月)。
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次年度使用額が生じた理由 |
イギリスの研究協力者と協働でデータ分析するために渡英する予定が、データ収集を2段階に分けたため、本年度中に渡英が実現しなかった。第1段階終了後のデータ分析はオンライン会議を通じて行った。2023年度、第2段階のデータ収集終了後に渡英を延期する。
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