本研究では、心理的幇助犯における因果関係について、その特殊性を踏まえた上で、具体的な判断基準について考察を行った。従来の学説では心理的幇助犯の因果関係には物理的幇助犯にはない特殊な問題があり、その判断基準は十分に解明されていないことが指摘されていたが、本研究の考察により、以下の2点が明らかになった。①しばしば指摘される心理的幇助犯における因果関係の特殊性は、物理的幇助犯と心理的幇助犯の因果関係の内容に違いを生じさせるものではない。②物理的幇助犯について正犯結果に対する因果関係は不要であるとの立場に依拠することで、心理的幇助犯と物理的幇助犯に共通する明確な判断基準を得ることが可能である。
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