本研究は,外国語読解における推論生成メカニズムを調査し,学習者に最適化した推論指導のあり方を検証することを目指す。これまでの母語・第二言語研究から,文章の結束性(接続詞や代名詞の使用)が読み手のテキスト理解や読解中の処理に影響を与えることが明らかとなっている。 しかし,読み手の推論生成に影響するテキストの特性の詳細と,それが読み手個人の特性(読解方略,記憶容量)とどのように作用しているか,まだ指導の効果の検証は十分ではない。そこで,本研究では読み手の推論生成に影響を与えうるテキスト特性「結束性」に着目し,読み手がどのようなテキスト情報を手がかりに推論生成を行っているかを,眼球運動計測実験から調査し(研究1),その結果に基づき,学習者の個人差要因に配慮した読解方略指導が推論生成能力の向上に寄与するか検討することを目指している(研究2)。 今年度は,当初予定していた研究1の眼球運動計測実験実施を完了することができなかった。理由として,実験環境の整備に時間がかかったこと,感染症対策の観点から対面での実験を実施できなかったことが挙げられる。実験実施には至らなかったものの,実験で使用するマテリアルの選定,読み手の読解中の処理を表す眼球運動の指標について,先行研究を整理するなど,調査の準備を進めることができた。また,日本人英語学習者の英文読解中の処理に関する関連研究について,学会発表,論文投稿を行うことができた。こうした成果に基づき,次年度の実験実施・分析を行う予定である。
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