本研究では、幼少期の心理社会的なトラウマ経験が成長後の情動とストレス脆弱性に及ぼす影響について検討した。その結果、幼少期のトラウマ経験単独では成長後の情動に影響を及ぼさないことが明らかとなった。一方、成体期に単独では影響が認められない軽度のストレスを負荷したところ、血中コルチコステロン値やうつ様行動および不安様行動が幼少期非トラウマ経験群と比較して有意に増加することが示された。さらに、内側前頭前皮質では、炎症に関連する遺伝子発現の上昇が認められた。これらのことから、幼少期トラウマ経験は、後のストレスに対する脆弱性を形成し、うつ様行動や不安様行動などの情動変容を誘発させることが示唆された。
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