研究課題/領域番号 |
22K20372
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
内藤 智也 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 基礎科学特別研究員 (40962915)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 原子核構造 / 原子核密度汎関数理論 / 密度汎関数理論 / 短距離相関 |
研究実績の概要 |
原子核内部の短距離相関を適切に考慮するための手法として、物性物理学で近年使われるようになった手法の一部を原子核構造計算に応用する検討を行った。また、それに関し、海外で開催されたオンライン研究会への参加するとともに、京都大学基礎物理学研究所において研究会の企画・開催を行い情報収集を行った。 また、当初検討していた手法以外に、教師なし深層学習を用いた多体計算手法を開発した。これは、深層ニューラルネットワークが任意の関数を近似できるという「万能近似定理」に依拠し、深層ニューラルネットワークを変分試行関数に用いることで、試行関数の表現能力を格段に向上させ、短距離相関を含む粒子相関を適切に考慮できることに着目した研究であるが、本手法の少数系に対するベンチマーク計算を行った。とくに、ボソンにおける交換関係、フェルミオンにおける反交換関係を導入し、更に励起状態の計算手法も提案した。これらの拡張により、今までの深層ニューラルネットワークを直接的に用いた波動関数計算に比べて格段に応用範囲が向上し、新たな計算手法として確立の可能性を示すことができた。 また、現状の平均場理論における問題点を確認するために、対相関やスピン軌道相互作用、テンソル力の重要性に焦点を当て、同位体チェーンにおける荷電半径を系統的に計算し、実験で観測されている荷電半径の異常と相互作用の関係性についても検討を行った。今まで言われていた起源以外の、荷電半径異常の起源の可能性を提案した。 また、平均場理論におけるアイソスピン対称性の原子核構造への影響を検討するため、系統的な Hartree-Fock 計算を行い、結果を解析した。 いずれの研究も既に論文として投稿済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していた手法は、既存の原子核理論の手法と類似しているが、その既存の手法を確認していたところ計算コスト等の観点からあまり優位性を感じられなかったため、新たに他の2つの手法を同時に検討することとした。そのうちの1つは教師なし機械学習を用いた計算であるが、すでに論文として投稿することができ、もう1つについても基礎計算をすすめることができた。しかしながら、当初はより具体的に原子核構造に適用した基礎研究ができると想定していたため。
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今後の研究の推進方策 |
教師なし機械学習を用いた手法については成功を収めたが、当該研究については、新たに交付された科研費のプロジェクトとして研究を継続する。 本研究計画においては、新たに検討を開始したもう一方の手法について、一様系でのベンチマーク計算を実際に行う。すでに一様系での第一原理計算での結果は共同研究者より提供を受けているため、比較検討を速やかに行うことができる。また、その当該ベンチマーク計算の結果を元に、一般の原子核構造計算に向けての手法開発を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費および物品費が想定していたより安価だったため、次年度使用額が生じた。次年度の情報収集・成果報告のための旅費に充当する。
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