5-OH-thromboxane B2の生成を評価するin vitroの系として、4日間薬剤処理を行うことで成熟顆粒球へと分化誘導したHL-60 (dHL-60) を用いた。ウェスタンブロッティングによるタンパク質の発現解析により、dHL-60は5-リポキシゲナーゼ、トロンボキサン合成酵素を恒常的に発現しており、さらにLPS刺激依存的にシクロオキシゲナーゼ-2の発現が誘導されることを確認した。そこで、5-リポキシゲナーゼ、トロンボキサン合成酵素およびシクロオキシゲナーゼ-2を発現するdHL-60細胞が産生するエイコサノイドを評価するため、質量分析装置を用いた分析を行った。その結果、刺激依存的に、基質であるアラキドン酸の増加に加え、シクロオキシゲナーゼ-2により産生されるprostaglandin E2およびprostaglandin D2、トロンボキサン合成酵素により産生されるthromboxane B2、さらに5-リポキシゲナーゼにより産生されるleukotriene B4の生成が認められた。 Thromboxane B2と光増感剤であるメチレンブルーを4℃にて一晩反応させることで一重項酸素付加反応により作成した5-OH-thromboxane B2を標品とし、dHL-60細胞における5-OH-thromboxane B2の産生を評価したところ、LPS刺激依存的に標品5-OH-thromboxane B2と一致するピークの形成が認められたことから、5-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、トロンボキサン合成酵素の3つの酵素を発現する成熟顆粒球において5-OH-thromboxane B2が産生される可能性が示唆された。
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