研究課題/領域番号 |
22K20704
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 一貴 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (50955127)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 天然物化学 / 創薬化学 / ライブラリー合成 / 抗菌薬 |
研究実績の概要 |
研究目的:薬剤耐性菌が世界中に蔓延しており、薬剤耐性菌感染症治療薬の開発が急務である。ペプチドグリカン生合成酵素の一つであるMraYは、細菌に普遍的に存在しており、かつその欠損は細菌にとって致死的である。また、MraYは既存の抗菌薬の標的とは異なるため、MraYを阻害するMraY阻害剤は、薬剤耐性菌にも効果のある新規抗薬剤耐性菌薬として期待されている。MraY阻害剤として、ヌクレオシド系天然物が知られている。これらの天然物は新規抗薬剤耐性菌薬として有望である一方で、構造が複雑であることから、創薬化学研究を展開するうえで、誘導体合成が煩雑である点が問題となっていた。本研究では、誘導体合成を効率化するため、定量的かつ化学選択的に反応するヒドラゾン形成反応を用い、アッセイプレート上で誘導体ライブラリーを調製し、そのまま生物活性を評価することとした。ここで得られた高活性誘導体は、さらなる化学変換を行い、高次の生物活性評価に供するものとした。 研究結果:2022年度は、本研究開始前までにライブラリー合成を実施済みであったMraY阻害天然物ムライマイシンとツニカマイシンに加えて、ムレイドマイシンとカプラマイシンに本法を適用し、ライブラリー合成と評価を実施した。その結果、天然物と同等あるいは、抗菌スペクトルの異なる誘導体がいくつか得られた。これらに関しては、さらなる化学変換を実施する。また、ヒドラゾン形成反応に使用するヒドラジンフラグメントの拡充も実施した。具体的には、今まではモノアミノ酸ヒドラジンだったところを、アミノ酸2種からなるジペプチド型へと拡充を図った。また、細胞毒性を誘起する懸念のあった長鎖アルキル基の使用を避け、芳香環を有するアシルアミノ酸ヒドラジンも同時に導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた新規天然物でのコア合成と誘導体ライブラリーの合成ならびに生物活性評価まで実施し、高活性誘導体を得ることができた。また、ライブラリー合成に使用するヒドラジンフラグメントの拡充も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ライブラリー評価の結果得られた誘導体のさらなる化学変換を実施し、薬剤耐性菌にも効果のある新規抗菌薬リードの創製を目指す。 また、これまでのヒドラジンフラグメントは、長鎖アルキル基を有するアミノ酸ヒドラジンに偏っていたことから、構造多様性を持たせるべく、ジペプチドの使用やアシル基の変更を実施した。一方で、アミノ酸を有さないヒドラジンユニットはいまだその数が限られ、構造も限定的である。そこで、より多様な相互作用が可能となるように置換基を増加させた多置換芳香族ヒドラジンなどの導入を検討していく。
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