研究課題
胃がんは組織学的な特徴に基づいてIntestinal-type、Diffuse-type及びMixed-typeに分類されている。Mixed-typeはそれ以外の非混合型と比べて予後が悪く、またその腫瘍内不均一性から単一の抗がん剤に対する抵抗性を有すると考えられ、新たな治療法が求められている。各組織型の発生機序の理解や浸潤・転移に対する治療法を開発するためには、実際の胃がんの病態を模した動物モデルを用いて、腫瘍―微小環境相互作用を含めた分子病理学的背景をより深く知ることが重要である。また以前から、胃がん細胞が性質変化を起こすことでIntestinal-typeからDiffuse/Mixed-typeへと組織型が移行する可能性が示唆されているが、その機序については明らかになっていない。これまで申請者はIntestinal-type胃がんのトランスジェニックマウスであるGANマウス(K19-Wnt1/C2mEマウス)の胃腫瘍から樹立したオルガノイドのがん抑制遺伝子Trp53をノックアウトし、変異型KrasG12Vを導入することで、高い浸潤・転移能を有するIntestinal-type胃がんの組織型を再現することを示してきた。本研究ではこれまで樹立したGANマウス腫瘍由来オルガノイド(Intestinal-type胃がん)に対してDiffuse-type胃がんに特異的な遺伝子変異を導入し、浸潤や腹膜播種を伴うDiffuse-type胃がんの組織型を示す新規モデルを樹立することでIntestinal-typeからDiffuse/Mixed-typeが発生する分子メカニズムや浸潤・転移に重要な分子を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
GANマウス胃腫瘍由来のオルガノイドに対してがん抑制遺伝子Trp53のノックアウトおよび変異型RhoA遺伝子を導入したGAN-RPオルガノイドを樹立することができた。このGAN-RPをヌードマウスの皮下に移植したところ、GAN-p53KOに比べて有意に腫瘍形成能が上昇することが分かった。また樹立したオルガノイドのマイクロアレイ解析を行なって腫瘍の悪性化に寄与しうる遺伝子群を得ることができた。
次年度は樹立した胃がんオルガノイドを同所移植し、組織型や浸潤の有無を評価する。さらに肺や肝臓への血行性転移や腹膜播種などの転移能に違いがあるか明らかにする。またマイクロアレイ解析によって得られた遺伝子群の中から悪性化に寄与している遺伝子を特定し、CRISPR/Cas9によるノックアウトもしくは悪性化促進分子を標的とする薬剤を用いて移植マウスを治療することで実際に治療標的となり得るか検討する。
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