研究実績の概要 |
本研究の目的は、マスト細胞を可視化する最新技術を用いることで、定常状態およびアレルギー疾患時のマスト細胞数を定量化することである。本研究によ り、マスト細胞についての定量的な理解が進み、アレルギー疾患の形成や治療効果に対する理解が飛躍的にアップデートすることが期待される。本年度は、蛍光タンパク質によってマスト細胞を可視化する遺伝子改変マウス(Mcpt5-TdTomatoマウス)を作成して、その皮膚組織を、最新の組織透明化技術 (Nat Protc 14:3506, 2019)を使い透明化し、3次元蛍光イメージングを行い、画像解析によりマスト細胞数の定量を試みた。Mcpt5-TdTomato マウスの皮膚組織、特に真皮中に赤色に染色される多数のマスト細胞を同定すること、ならびにその定量化に成功した。 蕁麻疹モデルの1つである PCA(passive cutaneous anaphylaxis)反応時における皮膚マスト細胞の可視化、定量化にも成功した。さらにマスト細胞数を減少させるKIT阻害剤の効果について本手法を用いて空間的・定量的に示すことができた。昨年度及び今年度の本研究成果はJACI globalに投稿し受理された。今後は拘束ストレス、自発的な運動誘発(回転カゴ留置による)、低温刺激(低温室での短時間のケージ暴露)、薬剤(ステロイド塗布、ヒスタミンH1受容体拮抗剤 、抗IgE抗体、抗IL-5抗体、JAK阻害剤など)による皮膚マスト細胞の数や分布の変化についても解析する予定である。これらの解析により、定常時の結合組織型マスト細胞の数や分布を解析するとともに、アレルギー疾患の病態時やストレス、薬剤投与時における結合組織型マスト細胞の量・空間・時間的な変化が明らかになる。
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