本年度は、前年度に引き続き、TRPV3チャネルアゴニストであるカルバクロール(オレガノの精油成分)をヒトの皮膚に塗布することによってTRPV3チャネル由来の皮膚血管拡張が起こるかを検証し、そのカルバクロール塗布によって生じる皮膚血管拡張のメカニズムを調査した。前年度は、主に一酸化窒素合成酵素とシクロオキシゲナーゼが部分的にカルバクロール塗布によって生じるTRPV3チャネル由来の皮膚血管拡張に関与していることを示し、また、カリウムチャネルも同様に関与している可能性を示していたが、カリウムチャネルの関与を調査する実験は、実験途中であったため、本年度において追加実験を行った。その結果として、非選択的カリウムチャネル阻害によってカルバクロール塗布による皮膚血管拡張がかなり低減したため、カリウムチャネルがTRPV3チャネル活性化による皮膚血管拡張に大きく関与していることが示唆された。その一方で、本研究で着目したカルシウム依存性カリウムチャネルや電位依存性カリウムチャネルの阻害では、カルバクロール塗布による皮膚血管拡張は低減しなかったため、どのカリウムチャネルがTRPV3チャネル由来の皮膚血管拡張に関与するかを特定することはできなかった。この2つのカリウムチャネルはマウスのTRPV3チャネル由来の皮膚血管拡張に関与することが示唆されていたので、ヒトとマウスではメカニズムが異なることが考えられる。本研究で得られた結果を2023年の日本生気象学会大会において口頭発表した。
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