没入型バーチャルリアリティ技術を用いて近位空間と遠位空間の半側空間無視を評価する機器を用い、回復期リハビリテーション病棟に入院している劣位半球損傷の脳卒中患者を対象として、半側空間無視による近位空間および遠位空間の無視範囲の変化について縦断的に評価を行いながら、脳の損傷部位との関係性を調査している。途中、研究実施施設で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生したことでデータ計測が中断されたため、現段階において対象者の人数を十分確保するには至っておらず、とくに、近位空間の無視と遠位空間の無視の重症度が大きく乖離する症例が乏しい状況であったため、無視空間の三次元的推移と脳の損傷領域との関係性について明らかにするには至っていない。一方、本研究を行うにあたり、疲労が近位空間の無視および遠位空間の無視に対して及ぼす影響について確認する必要性があると考え、近位空間と遠位空間双方の半側空間無視を呈した脳卒中患者1名を対象として検証を行った。その結果、疲労を伴う歩行を実施した後には、近位空間、遠位空間のいずれにおいても無視範囲の拡大がみられるという結果が示され、半側空間無視の評価を行う際には対象者の疲労に留意する必要性があることが示された。今後は対象者の人数を増やし、脳MRI画像からの病巣解析の結果と無視空間の三次元的推移の関係についての分析を行い、成果の公表に向けてさらに研究を進めていく予定である。
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