研究課題/領域番号 |
22KJ1137
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 良亮 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | オークション / メカニズム / 双方向市場 / 予算制約 / ソーシャルネットワーク |
研究実績の概要 |
双方向市場のオークションとは、複数の買い手・売り手がそれぞれ戦略的に行動するオークションである。買い手と売り手がともに戦略に行動するとき最適な資源配分の実現は困難だと知られているが、その重要性から追加の仮定や近似を許容して最善を目指す研究が進められている。本研究の目的は、双方向市場のオークションに関する理論整備を進めることである。 2022年度には、財が可分の場合に「単一サンプルの仮定」のもとで誘因両立性・個人合理性・収支均衡を満たすメカニズムを提案し、その効率性を社会余剰・流動的余剰を用いて評価した。2023年度には、この成果を次のように発展させた。 (a)財が可分の場合:2022年度の成果は当初の目標に適うものだが、弱収支均衡という最も弱い収支均衡しか保証されていなかった。そこで、直接取引強収支均衡という最も強い性質が達成されるメカニズムを提案し、その効率性を社会余剰の観点から評価した。 (b)財が不可分の場合:2022年度に提案した片方向市場の多面体的クリンチングオークションへの効率性の理論保証を進展させた。さらに先行研究の手法を利用してメカニズムを拡張し、不可分の場合にも2022年度のものに対応する成果を得た。 (b)に関する論文がアルゴリズム的ゲーム理論の査読付国際会議WINE’23に採択されるとともに、こうした成果に関する応用数理学会年会の発表が第19回若手優秀講演賞を受賞した。 加えて、ソーシャルネットワーク上の情報拡散を考慮したオークションの研究にも着手した。これは、双方向市場のオークションとも関係がある問題設定であり、近年盛んに研究されている。クリンチングオークションを拡張したメカニズムも提案されており、本研究課題では当該メカニズムへの理論保証の強化を目指し、まずは買い手の予算が共通という仮定のもとで買い手の追加に伴う効率性や収入の単調性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
双方向市場の多面体的クリンチングオークションの研究では、当初の計画で想定した成果が早い段階で得られた。その後も社会余剰を用いた効率性評価や直接取引収支均衡を満たすメカニズムの提案のために分析を行ったことで、計画を上回る進展が生まれている。また、ソーシャルネットワーク上のオークションの研究は計画になかったものであり、これにおいても成果を得ている。研究成果は適宜論文にまとめて国際誌や国際会議への投稿を行っており、既にWINE’23への採択も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
双方向市場のオークションにおける直接取引強収支均衡を満たすメカニズムについて、流動的余剰による効率性の理論保証や不可分財への拡張を進めていく予定である。また、ソーシャルネットワーク上のオークションに関する単調性の成果はより一般的な設定に拡張できると考えており、今後双方向市場の研究で用いた分析手法を用いてこれを進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
欧米での開催を想定して予算を確保していた国際会議がアジアでの開催であったため、その旅費の差額分の余剰が生じた。次年度において、PCなどの物品の購入や本年度に得られた研究成果を国際会議で発表するための渡航費用に充てる予定である。
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