研究実績の概要 |
大脳皮質の神経細胞(CaMKIIのプロモーター下)に細胞内カルシウムイオンのセンサータンパク質GCaMPを発現させた遺伝子改変マウスを用いて神経細胞の活動と脳血管の運動について解析した.まず二光子レーザー顕微鏡を用いて神経細胞の活動と同時に撮像した脳微小血管の構造画像を骨格化し,得られた数千点の血管中心線上のノードにおいて血管径を自動で計測するためのソフトウエアを構築した.つぎに神経細胞の重心位置を自動で抽出し,神経細胞の活動を定量化するためのソフトウエアを構築した.本研究で開発したこれらの手法を用いて脳の毛細血管の形態に関するビッグデータ分析を行った結果, 脳の毛細血管は安静時に少なくとも2種類の状態をとることが示唆された. 一つは安静時の直径が比較的大きく, 神経活動に関係なく安定した構造をとる毛細血管であり,もう一つは安静時の直径が比較的小さく, 神経活動に応じて構造を変化させる毛細血管である.これらの結果から,神経活動に対してすべての毛細血管が局所的な脳血流の調節機構に関与しているわけではないことが明らかになった.しかしながら、現在の画像の視野範囲では脳の動脈から静脈までに至るネットワーク構造や分岐の全数を計測することが難しいことが課題である.
|