研究課題
哺乳類は体サイズ依存で姿勢が異なり,大型種は,骨ひずみを抑えるため直立姿勢をとることが知られる.しかし,這歩き型の爬虫類では体サイズ依存の姿勢や骨ひずみの変化は知られていない.そこで,本研究では大型爬虫類のアメリカンアリゲーターに着目し,幼体~亜成体の姿勢や骨ひずみを調べた.令和3年度(2021年4月~2022年3月)は,米国クレムソン大学にてアリゲーターの歩行実験を継続した.4~12月にかけて,体長0.5~1.4 m級のアリゲーター6個体の上腕骨と大腿骨にひずみゲージを取りつけ,個体の回復をみてトレッドミル上で歩行実験を行なった.また,実験に使用した全ての個体を,ジョージア大学動物病院にて全身CTスキャン撮影した. 11~12月には,体長1.0 m級のアリゲーター3個体を用いて,前肢筋の筋電図検査を行った.実験の結果,アリゲーターの上腕骨では,ハイウォーク個体で圧縮ひずみ,這歩き個体でねじりひずみが優勢になることが分かった.これは,個体内でハイウォーク使用時にねじりひずみが高くなるとした先行研究と対立し,個体内と個体間では姿勢と骨ひずみの関係性が異なることを示す.また,大腿骨の主ひずみは,這歩き時に大きく,ハイウォーク時は比較的小さいことが分かった.これは,大型のアリゲーターが高い骨ひづみに対応する必要があることを示唆する.今年度は,CT・MRIデータから3D筋骨格モデルを構築し,骨ひずみのモデル計算を行う予定である.
2: おおむね順調に進展している
採用者は,2021年4月~2021年12月まで,米国サウスカロライナ州のクレムソン大学を拠点としてアメリカン・アリゲーターの歩行様式の研究を行った.2022年1月からは,拠点を英国ロンドンの王立獣医学校に移し,アリゲーターの四肢の筋骨格モデルの作成と,歩行シュミレーションを行っている.2021年11月には,アリゲーター幼体~亜成体の歩行様式の変化をまとめた論文を,Journal of Experimental Biology誌に発表した.2022年1月には米国統合比較生物学会にてアリゲーターの四肢骨ひずみに関する発表を行った.
令和4年度(2022年4月~2023年3月)は,引続き王立獣医学校でモデリングを行う.取得済みのCTデータを元に,骨格のリグモデルを作成し,MRIデータを元に,OpenSim上で筋の走行を復元する.異なる体サイズや姿勢のセッティングで,骨ひずみを比較する予定である.また,米国フロリダ州のセントオーガスティン・アリゲーターファームにて大型アリゲーターの歩行測定や,フロリダ大学自然史博物館にて,アリゲーターの四肢骨のマイクロCT撮影を予定している.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
巻: 289 ページ: 20220085
10.1098/rspb.2022.0085
Journal of Experimental Biology
巻: 224 ページ: 1-14
10.1242/jeb.242990
Journal of Morphology
巻: 282 ページ: 1514-1522
10.1002/jmor.21401