カーボンニュートラルの実現に向けて、CO2の電解還元は次世代のクリーンな燃料・化学原料の製造法として大きな注目を集めている。CO2電解還元を社会実装する上で、高い選択性と高い反応速度を同時に達成する必要がある。本研究課題では高活性・高選択な電極触媒の創製に加え、その触媒能を最大限に引き出すことができる電極・電解セル開発を目指す。 本年度は触媒能を最大限に引き出すことができる電極・電解セル開発を目的に、電解質の厚みを極限にまで薄くした固体高分子型CO2電解系においてアノード電解液由来のアルカリカチオンがカソード側でのCO2還元反応に及ぼす影響の定量的評価を試みた。 その結果、CO2電解活性は、固体高分子膜をクロスオーバーしたアルカリカチオンの量にほぼ影響されないことが明らかとなった。この知見を基に、アノード側からカソード側に輸送されるアルカリカチオン量を制御することでカソード側での炭酸塩の形成が抑制され、電解耐久性は大幅に向上した。これらの結果は、固体高分子型CO2電解において、アルカリカチオン輸送量の適切な制御が重要であることを意味しており、固体高分子型CO2電解系の設計指針を明らかにしたという点において非常に価値がある。 本研究期間全体を通じて、反応中間体であるCO(一酸化炭素)を経由したカスケード反応による有機物生成の実現には及ばなかったものの、その基盤的な電極触媒材料の開発に成功した。さらに、COを経由してエチレン等の有機物を生成する上で極めて重要とされている、電極表面のアルカリカチオン量の精密制御に取り組んだことで、有機物生成を志向した電解系の設計指針が明らかとなった。
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