研究実績の概要 |
当該研究ではハイエントロピー合金(HEA)を新規触媒材料として注目し、特異活性サイトを多数有する新規触媒の開発を行った。HEAは、5種類以上の元素をほぼ当原子組成比で含み、かつ単相の固溶体を形成する材料とされている。 今年度は2022年度に報告した還元性担体上での水素スピルオーバーを利用したHEAナノ粒子の合成について、その詳細な合成メカニズムの解明を行った。H2-TPR, in situ XAFS, in situ TEMの結果から、還元性担体上で貴金属と卑金属を含むHEAナノ粒子を合成する際には担体上に担持された貴金属前駆体が先んじて気相の水素で還元され微細な金属クラスターを形成する。このクラスターが水素スピルオーバーを誘起し、高い還元力を持つ原子状水素が担体上で導入される。この原子状水素によって複数種の金属元素が同時還元されることによってHEAナノ粒子の形成に至ることが示唆された。 加えて、炭素担体である還元型酸化グラフェン(rGO)に金属前駆体を担持しマイクロ波を照射することでHEAナノ粒子の合成を行った。これは炭素担体がマイクロ波を吸収し急速に昇温することで還元電位の異なる複数の金属が同時還元することでHEAナノ粒子の形成に至る。このHEA/rGO触媒を電気化学的水素生成反応に応用したところ単金属からなる触媒よりも高活性を示した。これは合金化により触媒の電子状態がチューニングされ中間体の吸脱着特性が変化したためであることが示唆された。 以上のように、本研究計画を通してHEAを利用した新規触媒系の提案を行った。また、水素スピルオーバーによるHEAナノ粒子の形成過程の解明も行った。これらの結果は多元系合金ナノ粒子触媒の設計・合成指針を提供するものである。
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