研究課題
ウラン同位体分別の更なる機構解明のためには、平衡論的同位体分別係数εと速度論的同位体分別係数αの理論計算が有効である。これらは同位体間の核体積差由来の電子状態項(核体積項lnKnv)と核質量差由来の振動項(核質量項lnKnm)の和として近似できる。しかし、αには遷移状態が関与し、重元素で支配的なlnKnvは相対論効果の影響を顕著に受けるため、重元素のαの理論計算手法は未確立である。本研究では水和鉄からウランへの電子移動反応をモデル系として用い、αの計算手法開発を目指してきた。しかし検討を進める中で、この反応系は電子状態が複雑であり理論計算が困難であることが分かった。そのため平衡系に焦点を当て、lnKnvにおける電子相関・計算手法の重要性を議論する事とした。ウラン同位体分別の理論計算に関する先行研究では、電子相関を取り込むことができないHartree-Fock(HF)法が用いられてきた。本研究では、HF法のみでなく密度汎関数理論(DFT)や単参照電子相関法であるMoller-Plesset摂動論(MP2)や結合クラスター法(CCSD, CCSD(T))、多参照電子相関法であるFock-space CCSD(FSCCSD)、完全活性空間摂動論(CASPT2)、制限活性空間摂動論(RASPT2)を用いてlnKnvを求めた。電子相関法は計算コストが高いため、対称性の高い小さい分子に対して計算を行った。単参照電子相関法はHFを過小評価しDFTを過大評価したが、多参照電子相関法はDFTと同程度かより小さいlnKnvを与えた。HFやDFTは一般的な分子も取り扱えるため、実験系を模した分子モデルを構築し、HFとDFTを用いてεを求めた。6価同士ではDFTがより実験値に近い結果を与えた。一方、6価-4価間では、HFは実験値に近い値を与えたが過大評価傾向にあり、DFTは過小評価した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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