研究実績の概要 |
本年度において、T細胞疲弊の調節因子として知られる NR4Aに着目し、NR4A triple knockout (TKO) CAR-T細胞を作成し、フローサイトメトリーにて疲弊化に関連する細胞表面マーカーの測定、in vitro でのがん細胞との共培養後の killing assay モデルによる抗腫瘍効果の検討を行った。その際にNR4A1,2,3のsingle knock outとdouble knock outのCAR T細胞とを比較することで、NR4A TKO CAR-T細胞が最も高い抗腫瘍効果を発揮することを実証した。マウスモデルの実験では、NR4A TKO CAR-T細胞は強い抗腫瘍効果を示し、生存率の改善に寄与することが明らかになった。また代謝能に関して、Flux analysis、MitoTrackerを用いて評価を行い、NR4A TKO CAR-T細胞は、ミトコンドリアの活性化と活性酸素の発現上昇、酸化的リン酸化の亢進による強いATP産生能を有する事を実証した。同CAR T細胞の RNA シークエンスの解析でも、NR4A knockout CAR T 細胞はミトコンドリア関連遺伝子の発現上昇、memory phenotype に関連する遺伝子の発現亢進を認めた事に加え、癌細胞との共培養後のRNAシークエンスではミトコンドリアに関連するpathwayの亢進と疲弊関連遺伝子の発現低下を認め、これまでの研究と矛盾しない結果を確認した。シングルセルRNAシークエンスにおいてもNR4A TKO CAR-T細胞は疲弊関連遺伝子の減少だけでなく、Memory関連遺伝子の発現上昇とミトコンドリア関連遺伝子発現の上昇を認めた。今後はNR4Aがミトコンドリアに及ぼす影響とその関連遺伝子について引き続き研究を継続する予定である。
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